本来、モノやサービスの値段は、売り手と買い手との関係性や、その時々の状況などさまざまな要因で決まる。言い換えれば、値段はそこに多様な情報を含んでいる。
近代化と共に値段の付け方は均質化され、一律に提示することが難しい“よく分からない値段”が敬遠されるようになってきたが、京都にはまだ一部にそうした“おねだん”が残っている。チャプリンの研究者である著者は、京都に住んで20年あまりの「京都人見習い」。ゲーム感覚で京都という多様な顔を持つ社会に分け入っていく。
外から見ると最も不可解で、近寄りがたくもあるのが、芸舞妓のいる花街。お座敷遊びでは価格の決定に店と客、紹介者の関係が反映される。そこでは、サービスの価値を客側が問うと同時に、客側の価値も問われている。
そのほか、地蔵盆の際に、お地蔵さんの無いマンションなどの自治会に寺から貸し出す仕組みがあることなど、観光客向けではない京都のさまざまな顔が、値段を切り口に紹介される。