恋愛中毒

山本文緒「恋愛中毒」

女にだらしない作家の秘書として働くようになったバツイチ女性の物語。結婚生活の失敗から心を閉ざした主人公の水無月は、既婚者の創路には都合のいい女に過ぎないことを自ら理解していたはずなのに、徐々に執着が生まれ、袋小路に陥る。

物語の後半、水無月の自己愛や被害者意識、偏執狂的な面が露わになっていく展開にぞっとする。普通だと思っていた人の闇が付き合っているうちに見えてくる。そして、気付いた時には既に逃げられなくなっている。そんな怖さ。

恋愛小説だが、甘い、切ないと言った形容詞では表せない。強いて言うなら苦いだろうが、それもちょっと違う。主人公の壊れっぷりはどこか痛快。

コバルト文庫などで少女小説を書いていた著者の出世作。第20回(1998年)吉川英治文学新人賞受賞。

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