なほになほなほ ―私の履歴書

竹本住太夫「なほになほなほ ―私の履歴書」

人間国宝の文楽太夫、七代目竹本住太夫の自伝。

語りに、息に、音に、人の一生をのせることができるのか、人生をかけて磨いてきたもの全てを込めることができるのか。

89歳、脳梗塞から復帰した住太夫が今秋語った「沼津」は、決して声がよく出ているとは言えないが、情に溢れ、なぜか涙がにじんだ。

浄瑠璃の真髄として「字のないところ」を語る、と言うが、まさにこの本の文章も字のないところを語りかけてくるようなあたたかみがある。大阪弁の語りが優しく、美しい。

一度の人生では修行しきれないと言い、文楽を次代につなぐには自分たちがもっと研鑽を積まなくてはいけないと最長老自らが語る。なほになほなほ、芸の道はかくも果てしない。

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