西ひがし

金子光晴「西ひがし」

「どくろ杯」「ねむれ巴里」に続く自伝3作目。

妻をベルギーに残して日本への帰途、戦争の空気が漂い始めたマレー半島で再び当てどない生活に。

前二作と同じく晩年に回想して書いたものながら、今作では人や社会を見る視点がクリアになっている気がする。虚実入り交じる生活で揺れ動く心は変わらないが、悲壮感が薄れ、軽さや力強さが生まれつつある。

コメントを残す