ディストピア的な作品を多く書いている作家だが、SF小説のような暗い未来を予言したいわけではなく、むしろ、自明と思われる常識や文化に対する疑いが創作の原動力になっているように思える。
死者の肉を食べることで弔い、命をつなぐ風習が一般化した近未来の社会を描く表題作。死者の身体の一部を家具や装飾として使用する「素敵な素材」。冒頭の2編が強烈だが、続く「素晴らしい食卓」が著者の問題意識を分かりやすく示している。
全く違う食生活を送る人々が食卓をともにするコメディーのような作品だが、「みんなちがって、みんないい」という結論に落ち着くとみせかけて、それが醜悪にも見える皮肉な幕切れがインパクト抜群。そのほか、バラエティーに富んだ作品群が読者の常識を揺らがせる。