東京の裕福な家庭に育った姉妹の戦後の物語。母親を早くに亡くし、一緒に暮らしていた父親は戦犯容疑で連れて行かれてしまう。家を守るため、姉妹は自宅を米兵相手の慰安所にして生活費を稼ぐようになる。そこに特攻隊帰りの青年や、姉妹の父によって慰安所で働くことになった少女のエピソードが絡む。
好きな男の後を追う姉と、自ら春をひさぐ妹。対照的な生き方をしつつ心を寄せ合う姉妹の姿に女性のしたたかな強さが滲む。
皮肉やユーモアのきいた展開で、非常に面白く読んだが、後半は感傷的なメロドラマにまとまってしまったような印象も受ける。退廃といっても、そこに、自らが戦争を経験した無頼派や、自らの身を切るような文章を綴った戦前のデカダン小説のような切実さは無い。ただその安っぽさも著者の狙いなのかもしれない。重いテーマを扱いながらも軽やかで、それはある意味、戦後の日本社会を表しているような気もする。