歌右衛門の六十年 ―ひとつの昭和歌舞伎史

「歌右衛門の六十年 ―ひとつの昭和歌舞伎史」

舞台では歌舞伎の華やかな面を、舞台裏では激しい権力闘争の面を、2代にわたって体現した歌右衛門。

団菊左亡き後の梨園を牛耳った五世。師でもある吉右衛門とコンビを組み、その後は幸四郎、勘三郎と競い、やがて戦後の歌舞伎界に君臨した六世。愛という表現がそぐわないほど、当然のように芸の世界に生き、執着した。

六世の聞き書きが本書の中心で、女形らしい柔らかな口調だが、自分こそが歌舞伎の本流を継承しているという強烈な自負が感じられる。

この本の出版当時、伸び盛りだった猿之助と玉三郎について、猿之助の歌舞伎、玉三郎の歌舞伎ではなくて、歌舞伎の中の猿之助、玉三郎にならなければ、と語っているのが印象的。

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