著者の加村一馬氏は1946年、群馬県生まれ。13歳の時に、両親の虐待から逃れて足尾銅山の廃坑に住み着き、その後も富士の樹海や川辺を転々として、ホームレスとして半世紀近くを生きてきた。
ヘビやネズミ、カタツムリ、カエルを食べ、時には山で採った山菜を売ってわずかな収入を得る。やがて茨城の小貝川の河川敷に小屋を建てて暮らすようになり、57歳の時に窃盗未遂で逮捕され、取り調べと公判を通じて半生が明らかになった。
“洞窟オジさん” の続きを読む
読んだ本の記録。
著者の加村一馬氏は1946年、群馬県生まれ。13歳の時に、両親の虐待から逃れて足尾銅山の廃坑に住み着き、その後も富士の樹海や川辺を転々として、ホームレスとして半世紀近くを生きてきた。
ヘビやネズミ、カタツムリ、カエルを食べ、時には山で採った山菜を売ってわずかな収入を得る。やがて茨城の小貝川の河川敷に小屋を建てて暮らすようになり、57歳の時に窃盗未遂で逮捕され、取り調べと公判を通じて半生が明らかになった。
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著者の初期の代表作で、直木賞受賞作。ソウル・ミュージックをBGMに、黒人社会の恋愛を描く。小洒落た雑誌に載っていそうな翻訳小説の雰囲気だが、性を描写しつつ透明感のある洒脱な文章に著者の作家性が強く表れている。
“ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー” の続きを読む
ひと夏、親戚の紹介で旧家の世話になることになった語り手の青年。そこで美しい姉妹と、姉の夫を巡る複雑な人間関係に触れることになる。水路が縦横に巡らされた、美しく、どこか退廃的な雰囲気が漂う田舎町を舞台とした名品。ノスタルジックな雰囲気が好きな人にはたまらないだろう。
“廃市” の続きを読む
堀川惠子「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と『桜隊』の悲劇」
広島で被爆し、全滅した劇団「桜隊」は、井上ひさしの「紙屋町さくらホテル」や新藤兼人監督の映画で取り上げられてきたが、いずれも原爆の悲劇としての側面が強く、なぜ彼らが広島にいたのか、その背景にある戦前・戦中の苛烈な思想統制、演劇人への弾圧については資料の不足からあまり描かれてこなかった。
著者は、桜隊の演出を手がけていた八田元夫の膨大なメモや未発表原稿を発掘し、彼の生涯を縦軸に、戦前から戦後に至る表現者たちの受難の歴史を現代によみがえらせた。
“戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇” の続きを読む
神学者でもあり、作家でもある著者が、聖書の膨大なテキストを小説の文体で書き下ろした。
天地創造、神とアブラハムの契約、モーセの出エジプト、ダビデとソロモンの時代、バビロン捕囚。旧約聖書に書かれたエピソードの一つ一つは多くの人が知っているだろうが、全体を通読したことがある人はキリスト教徒やユダヤ教徒以外では稀だろう。膨大な断片の集まりである聖書を、神学者としての緻密な解釈に立脚しつつ、原典に忠実に、現代の読み物として蘇らせた著者の仕事はまさに偉業と言える。
“小説「聖書」” の続きを読む
イスラム革命後のイラン北西部マハバードを舞台に、独立を求めて戦うクルド人ゲリラと、ハジ(巡礼者)と呼ばれた日本人二人の物語。著者の代表作とされる長編であり、スケールの大きさとフィクションとは思えない緻密な描写に圧倒される。
“砂のクロニクル” の続きを読む
恋愛小説の大家の70年代の作品。当時はこれが自立した新しいヒロイン像だったのかもしれないけど、今読むとどうだろう。小説や物語の受け止めに性差はあまり無いと思いたいけど、この作品は男女や過去の恋愛経験で感じ方が大きく変わるかもしれない。
“言い寄る” の続きを読む
20年ほど前のベストセラーを今さらながら。
舞台は孤島の研究所。幼少期に両親を殺し、隔離されたまま研究を続ける天才少女と、その突然の死を巡って物語は進む。プログラミングや理系の学問の素養のある人は、タイトルや序盤の会話に隠されたヒントに気付くかもしれない。
“すべてがFになる” の続きを読む
1989年のブッカー賞受賞作。
語り手の執事スティーブンスは、四角四面の、現代ではかえって慇懃無礼に感じられるような“英国執事”。ことあるごとに執事としての品格を延々と語り、新たな主人であるアメリカ人に合わせるために、真剣にジョークを研究するさまがその性格をよく表している。
ある日休暇を貰った彼は、かつて同じ屋敷に勤めた元同僚の女性を訪ねて小旅行に出かける。その旅の風景と、過ぎ去った日々の回想が交互に綴られる。
“日の名残り” の続きを読む