井上ひさし、平田オリザ「話し言葉の日本語」
井上ひさしと平田オリザの対談集。もとが雑誌連載のせいか、広く浅くという感じだけど、二人とも言葉にこだわってきた劇作家だけに色々と気付かされる視点が多い。
小説は個人とともに誕生し、古来からの演劇が表現できなかった緻密な表現を可能にした、その上で現在再び小説では表現できないものが出てきている……という指摘は、優れた小説家でもある井上ひさしが感じていた現代文学の行き詰まりが伺えて興味深い。
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読んだ本の記録。
井上ひさし、平田オリザ「話し言葉の日本語」
井上ひさしと平田オリザの対談集。もとが雑誌連載のせいか、広く浅くという感じだけど、二人とも言葉にこだわってきた劇作家だけに色々と気付かされる視点が多い。
小説は個人とともに誕生し、古来からの演劇が表現できなかった緻密な表現を可能にした、その上で現在再び小説では表現できないものが出てきている……という指摘は、優れた小説家でもある井上ひさしが感じていた現代文学の行き詰まりが伺えて興味深い。
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三遊亭圓朝「怪談 牡丹燈籠」
怪談というよりも、仇討ちもの。あらすじは知っているけど、ちゃんと読んだこと無いな、と軽い気持ちで手にとったら、予想をはるかに上回る面白さ。
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香月洋一郎「景観写真論ノート 宮本常一のアルバムから」
宮本常一が撮った風景写真と、その景観を読み解いたメモをまとめた本。
田畑の形がどうなっているか、住家が密集しているか、分散しているか、山肌に何の木が植えられているか…景観にはその土地に生きた人々の暮らしの歴史が刻まれている。大学生の時に宮本の「空からの民俗学」を読んでそのことに気付かされて以来、景色を見る目が多少なりとも変わったのだが、その宮本のまなざしがよく分かる一冊。
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2013年の読書量は前年より2冊多い132冊、39788ページ、1日平均109ページ。
印象に残った本は、読んだ順に、
渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ」、ジョン・クラカワー「空へ」、吉田司「下下戦記」、奥野修司「ねじれた絆」、沢木耕太郎「テロルの決算」、古川隆久「昭和天皇」、高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」、高田衛「完本八犬伝の世界」、高山文彦「火花」、石牟礼道子「椿の海の記」、有吉佐和子「一の糸」、幸田文「きもの」、網野善彦「宮本常一『忘れられた日本人』を読む」、ロメオ・ダレール「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか」、宮本常一「炉辺夜話」、モハメド・オマル・アブディン「わが盲想」、蔵前仁一「あの日、僕は旅に出た」、服部龍二「広田弘毅」、藤林貞雄「性風土記」、角幡唯介「雪男は向こうからやって来た」、奥野修司「ナツコ 沖縄密貿易の女王」など。
石井光太「蛍の森」
ハンセン病に対する苛烈な差別を正面から描いた石井光太の小説。一歩間違えばただ悪趣味なだけになってしまいかねない題材だが、四国の山中にあったカッタイ寺を舞台に、療養所に隔離されることを拒み、社会から姿を消したことで歴史に残らなかった存在を蘇らせることに成功している。
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奥野修司「ナツコ 沖縄密貿易の女王」
終戦直後の沖縄に現れた数年間の大密貿易時代に、太陽のように存在した夏子。
八重山は戦前、戦中を通じて台湾経済圏に属し、終戦後は米軍支配下で放置されたことで、「黄金の海」に浮かんだ密貿易の中心となった。日本の辺境となった現在からは想像できないほどの繁栄の時代。アメリカ世でもヤマト世でもない、ウチナー世を象徴しながら、資料に残らなかった38年の生涯。
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安田登「異界を旅する能 ワキという存在」
能で、他の芸能と比較して特に際立つのがワキという存在。大抵は漂泊の旅をしていて、シテと出会う。その後はワキ座でほとんど動かず静止していることが多い。シテ=異界が舞台上に現れる触媒となるワキの存在を考察することは、そのまま能(夢幻能)という芸能の本質に迫ることになる。
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