宮本常一の写真に読む失われた昭和

佐野真一「宮本常一の写真に読む失われた昭和」

日本中の村という村を歩き、十万点の写真を残した宮本常一。民家の軒先や畑、林……写真家ではなく、あくまでメモとして写したものなので「写真」としての質が高いわけではないが、それらの写真は土地の人々がどんな生活をし、自然の中でどう労働してきたのかを雄弁に伝えている。
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江戸の本屋さん ―近世文化史の側面

今田洋三「江戸の本屋さん ―近世文化史の側面」

京都から始まった日本の出版産業。出版点数を見ると18世紀後半、天明から寛政にかけて一気に上方から江戸へと中心を移したことが分かる。ただ江戸期の書商はいずれも明治になると姿を消した。

文化の変遷は出版から見ると質、量とも非常に分かりやすい。紙メディアとともに出版業そのものが岐路に立つ今、改めてその文化的な役割を考えさせられる一冊。
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日本妖怪異聞録

小松和彦「日本妖怪異聞録」

酒呑童子から百鬼夜行まで、フィクションとしての妖怪はどうして生まれたのか。

朝廷や仏法の権威を示すものから、社会の不安、不満を色濃く映したものまで鬼や天狗のイメージの変遷。妖怪とは、まさに多神教的な、人間中心の世界観の産物と言えるかもしれない。
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東西不思議物語

澁澤龍彦「東西不思議物語」

妖怪、幽霊、魔術……西洋にこんな話がある、日本にも似たような話がある……と、東西の怪異譚を引きながら、イメージの差異や共通性を軽妙な語り口で紹介していく。

澁澤龍彦らしい衒学的な香りにどっぷりと浸かれる一冊。博識ぶりに驚くとともに、つまみ食い的な物足りなさも。

性の民俗誌

池田弥三郎「性の民俗誌」

古典文学や小唄、川柳を通じて日本の性や男女関係の多様さを説き明かす。

大変面白い。ただ、この本も含めて、こうしたテーマは民俗を直接採集したものが少ないのが残念。赤松啓介氏の本なんかも非常に刺激的だけど、記憶による部分が多いし、もっと体系的な本が無いかな。無理か。

絵巻物に見る日本庶民生活誌

宮本常一「絵巻物に見る日本庶民生活誌」

中世以前の絵巻物の隅に描かれた民衆の姿を通じ、当時の生活を読み取っていく。

仮説をつなげ、語られなかった歴史をよみがえらせる手法は後に網野善彦らの研究につながっていった。かなり面白く刺激的な一冊だが、印刷が不鮮明なのに加え、絵の収録が不十分なのが残念。新書ではなく大型本で読みたい。