ワセダ三畳青春記

高野秀行「ワセダ三畳青春記」

いいなあ、大学に戻りたくなってしまった。

アパートの三畳間を駆け抜けた青春人模様。最後、恋してアパートを離れる決意をするところは心がほっとしてしまった。すてきな1冊。

空の中

有川浩「空の中」

著者の作品を評して時々使われる“大人向けライトノベル”とは言い得て妙。文章や構成は丁寧だけど、キャラ作りとかセリフとかがラノベっぽい。読みながらにやにやしてしまう。ストーリーも驚きは無いけど、良いよねこういうの、って読後感。老若男女、お話が好きな全ての人にお勧めできる。

苦海浄土

石牟礼道子「苦海浄土」

読み終え、言葉が出ない。水俣の話だが、ルポでも聞書きでもない。ジャーナリズムでは絶対に出来ない記録と鎮魂と告発の仕方。

苦海そのものに生きる人々の語りは、逆説的に人間讃歌ですらある。

岬・化粧他 ―中上健次選集12

「岬・化粧他 ―中上健次選集12」

「重力の都」は息苦しさを感じるほど。

谷崎の後に中上があるが、その後は無い。中上の死で日本の近代文学が終わったと言われるが、それに納得してしまうだけの作品。

スティル・ライフ

池澤夏樹「スティル・ライフ」

初期の池澤夏樹の文章は透明感という言葉がしっくりくる。文章を読むだけで気持ちが軽くなる作家はそうそういない。

中上健次「岬」

地虫が鳴き始めていた、の書き出しから続く息苦しいほどの濃密さ。

“路地”では噂こそが現実で、場所の狭さは物語の狭さを限定しない。「枯木灘」に続き、「千年の愉楽」や「奇蹟」へと広がる作品群の無限の可能性を予感させる。

文鳥・夢十夜

夏目漱石「文鳥・夢十夜」

久しぶりに読んだけど表題の二作は鳥肌もの。夢十夜の第一夜、第三夜は何度読んでもぞくぞくする。「永日小品」も素敵な小品集。