読みながら気分が沈んでいく。ただ中学、高校で“強者”として生きてきた人には全くピンとこない小説だろう。
こじらせた初恋の物語。といっても最近よく使われるコメディチックな「こじらせ」ではなく、歪んで、暗く、痛々しい。
“しろいろの街の、その骨の体温の” の続きを読む
読んだ本の記録。
読みながら気分が沈んでいく。ただ中学、高校で“強者”として生きてきた人には全くピンとこない小説だろう。
こじらせた初恋の物語。といっても最近よく使われるコメディチックな「こじらせ」ではなく、歪んで、暗く、痛々しい。
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日本語は世界的に見ても非常に多様な表現形態を持っている。
池澤夏樹選の日本文学全集30巻は、文体のサンプル集とでも言うべき内容。祝詞や経文、漢詩から、琉歌(琉球語の定型詩)や、アイヌ語の文章まで。聖書の翻訳や、ハムレットの独白もそれぞれ6種類収録され、日本語の幅の広さがよく分かる。
“日本語のために 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集30” の続きを読む
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集11
好色一代男/雨月物語/通言総籬/春色梅児誉美
江戸文学の豊かさとレベルの高さがよく分かる一冊。
「好色一代男」は“女3742人、男725人”と交わった男、世之介の一代記。7歳から60歳までを1年1話で綴り、1話完結の連載漫画のようなテンポの良さ。世之介、7歳、夏の夜。子守の女中に「恋は闇というのを知らないか」と迫り、10歳で早くも男色に目覚める。後半にいくにつれて徐々にマンネリ化していくのも連載漫画っぽい。 “好色一代男、雨月物語ほか 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集11” の続きを読む
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09
古川日出男訳「平家物語」
祇園精舎の鐘の声/諸行無常の響きあり/沙羅双樹の花の色/盛者必衰の理をあらはす
冒頭の文章は誰でも知っているのに、ちゃんと平家物語を読み通したことがある人は少ないのでは。古川日出男は壮大な軍記物語を、現代の小説の文体を取らず、あくまで琵琶法師の語りとして現代に蘇らせた。
「祇園精舎の鐘の音を聞いてごらんなさい。ほら、お釈迦様が尊い教えを説かれた遠い昔の天竺のお寺の、その鐘の音を耳にしたのだと想ってごらんなさい。
諸行無常、あらゆる存在(もの)は形をとどめないのだよと告げる響きがございますから」
“平家物語 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09” の続きを読む
葛西聖司「僕らの歌舞伎: 先取り! 新・花形世代15人に聞く」
次代の花形15人のインタビュー集。
松也、梅枝、歌昇、萬太郎、巳之助、壱太郎、新悟、右近、廣太郎、種之助、米吉、廣松、隼人、児太郎、橋之助。一人一人の人柄が滲むと同時に、誰に、いつ、どんな教えを受けたのかを具体的に聞いていて、芸の継承や人間関係が分かって興味深い。歌舞伎は家柄が重視されるが、同時に家柄だけで花咲くこともない厳しい世界。15人とも勉強熱心。
“僕らの歌舞伎: 先取り! 新・花形世代15人に聞く” の続きを読む
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08
日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集
鎌倉時代に成立したとされる「宇治拾遺物語」。煩悩を断ち切るために陰茎を断ち切った、という僧侶が貴族の家を訪れ、証拠として下半身を露出。主の命を受けた小僧が下半身の密林を探ると、刺激を受けたモノが巨大化して噓が露見。という話(「玉茎検知」)があって、高校生の頃に読んで度肝を抜かれたことを思い出す。
“池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08” の続きを読む
Songlines(ソングラインズ)は英国の雑誌。BBC Radio 3がAwards for World Music(BBCワールド・ミュージック・アワード)を廃止したのに伴い、2009年に独自の賞を創設した。
毎年、最優秀アーティスト、グループ、多文化コラボ、新人の4部門を選出している。2016年からは多文化部門が各地域部門に変更された。
2009
BEST ARTIST: Rokia Traoré
BEST GROUP: Amadou & Mariam
CROSS-CULTURAL COLLABORATION: Jah Wobble & The Chinese Dub Orchestra
NEWCOMER: Kiran Ahluwalia
“Songlines Music Awards” の続きを読む
BBCワールド・ミュージック・アワード
ワールド・ミュージック、と一言で言っても幅が広い。
(世界の広さだけ包括する音楽の幅があるのだから当然だ)
最近のワールド・ミュージックは、伝統的な民族音楽(ethnic music)を下敷きにしつつも、RockやR&B、Hip-Hopなど西洋音楽の影響を受けていたり、それらの技法を逆輸入して洗練された音を作り出していて、いわゆるポピュラー・ミュージックにしか馴染みがない人でも抵抗無く聴くことが出来る。それだけに、触れる機会がないというだけで聴かないのはもったいない。
ただ国内ではあまり馴染みのないジャンルで、日本語で手に入る情報は限られているのが悩ましいところ。
個人的に、興味を持ち始めて最初に参考にしたのが、BBC Radio 3が2008年まで主催していたAwards for World Music。
BBCのサイトは年度ごとに特設ページが分かれており、過去の受賞者をまとめたサイトも見つからなかったため、以下に個人的なメモを兼ねて一覧にしてみた。09年からはSonglines(ソングラインズ)という英国の音楽雑誌が、賞の精神を継ぐような形でSonglines Music Awardsを主催している。
◇BBC Radio 3 Awards for World Music
2002 Winners
Africa: Djelimady Tounkara
Asia/Pacific: Yat-Kha
Americas: Cachaito Lopez
Europe/Middle East: Taraf de Haidouks
Boundary Crossing: Nitin Sawhney
Innovator: Manu Chao
Newcomer: Susheela Raman
“BBC Radio 3 Awards for World Music” の続きを読む
ハロルド・ピンター「温室/背信/家族の声」
ハロルド・ピンターの戯曲集。難解と言われる作家だが、「背信」は純粋にドラマとして引き込まれる。不倫する男と女、その夫。ほぼ三人芝居で、関係の終わりから始まりまでの場面を時間を遡って見せていく。その過程で、誰がどこまで知っていたのかが次第に明らかになり、人間関係のさまざまな“背信”が浮き彫りになる。