三島由紀夫「近代能楽集」
三島由紀夫が能を現代風に翻案した戯曲集。非常に巧みな翻案で、短編小説よりも短い文章に三島のエッセンスが凝縮されている。能楽の美と三島の美意識が深いところで共鳴しているよう。
解説でドナルド・キーンが書いているように、能は言葉遣いは古くても、内容自体はギリシア古典劇と同様、時代に全く関係が無い。時代を超越した人の情念や美を描いていることがよく分かる。
読んだ本の記録。
ロメオ・ダレール「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか ―PKO司令官の手記」
原題は「Shake Hands with the Devil」。この本をもとにした同名ドキュメンタリーを見たことがあるが、まさか邦訳されるとは。
94年、国民の1割に当たる約80万人がたった100日の間に虐殺されたルワンダ。悲劇の記録は邦訳も含めて多く出ているが、背景を丁寧に分析した本は少ない。これは、当時、目の前で始まった虐殺を傍観するしかなかった国連平和維持軍の司令官による手記。徐々に緊張感が高まる中、国連と国際社会がいかにルワンダを無視したのかの貴重な証言となっている。
「私たちは同じ人間なのだろうか? あるいは人間としての価値には違いがあるのだろうか?」
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菅原出「民間軍事会社の内幕」
兵站だけではなく、訓練、軍事作戦まで担うPrivate Military Company。国家が表立って行えない分野や、民間の方が効率よく専門性を高められる分野から始まったが、現在はコストカットや人員不足を補うため、かつての軍隊の一部を担う形で欠かせない存在となっている。
正規兵の訓練や、捕虜の尋問まで“外注”する実態は日本からは想像しがたいが、PR会社がメディアや政治家を誘導して世論を形成し、PMCが大量動員されて戦争を遂行する新たな軍需産業の仕組みがイラク戦争を経て出来上がりつつある。
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張競「中華料理の文化史」
文化、風土と切っても切り離せない「食」だが、その歴史は意外なほど浅い。古来、東西南北の民族が交錯し、支配層も入れ替わってきた中国では食習慣の変化も大きかった。
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