中村文則「土の中の子供」
親に捨てられ、虐待された子供は長じて自ら恐怖を求めるようになった。
ストレートな純文学だが、文章は大変読みやすい。ふとした瞬間の自己破壊の衝動や、社会から逃げ出したい焦燥感は他人事とは思えない切迫感がある。ただ併録の「蜘蛛の声」も含め、どこか既視感もある。
読んだ本の記録。
色川武大「百」
家族との微妙な距離感を描いた短編集。「百」と「永日」は父との、「連笑」は弟との関係、「ぼくの猿 ぼくの猫」にはナルコレプシーで著者が生涯悩まされた幻覚が綴られる。博徒・阿佐田哲也としての無頼のイメージからは遠い、静かで誠実な私小説。
自分に、ここまで真っすぐ自らを見つめることができるだろうか。
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菊地成孔、大谷能生「東京大学のアルバート・アイラー ―東大ジャズ講義録」歴史編&キーワード編
講義録だが、むちゃくちゃ面白い。音源を次から次へと紹介しながら、軽妙な語り口で菊地・大谷史観とも言うべきジャズの歴史を編んでいく。これまで何となく聞いていたジャズが高度な記号性や論理を有し、それが商業性の中でどう変化してきたかがよく分かる。
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