山川静夫「大向うの人々 歌舞伎座三階人情ばなし」
劇場の三階席後方から声をかける「大向こう」。静岡から上京した著者は大学時代に歌舞伎にはまり、自らも大向こうになる。タイミング良く声をかけるには話の筋を覚えているだけでなく、義太夫や長唄の知識も不可欠。それは趣味というより一つの芸、生き様に近い。
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読んだ本の記録。
山川静夫「大向うの人々 歌舞伎座三階人情ばなし」
劇場の三階席後方から声をかける「大向こう」。静岡から上京した著者は大学時代に歌舞伎にはまり、自らも大向こうになる。タイミング良く声をかけるには話の筋を覚えているだけでなく、義太夫や長唄の知識も不可欠。それは趣味というより一つの芸、生き様に近い。
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中島らも「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」
進学校で落ちこぼれていった日々から、フーテン時代までを振り返るエッセイ集。躁鬱やアルコール依存のイメージ、夭逝したこともあって型破りな人という印象が強いが、文章は柔らかく、温かい。それは、自身の弱さを隠さず、人の弱さを否定しないからだろう。自殺した友人について書いた文章が特に心に残る。
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中島らも「今夜、すベてのバーで」
重度のアルコール依存症だった著者が、連続飲酒で入院した病院での日々をもとに綴った小説。「酒をやめるためには、飲んで得られる報酬よりも、もっと大きな何かを、『飲まない』ことによって与えられなければならない。それはたぶん、生存への希望、他者への愛、幸福などだろうと思う」。飄々としたゆるい描写の中に、ところどころ透徹した視線が見え隠れするのが著者らしい。
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スベトラーナ・アレクシエービッチ「チェルノブイリの祈り ―未来の物語」
昨年のノーベル文学賞受賞作家。“チェルノブイリ後”を生きるベラルーシの人々の聞き書き。事故後の収束活動にほぼ強制的に動員された予備役の兵士達、夫を失った妻、先天的な病を持つ子を抱える母、 疎開先で差別された子、残された動物を殺して回った猟師、避難区域に戻って暮らすサマショールの人々…。読んでいて胸が締め付けられる。
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2015年に読んだ本は121冊(前年比15冊増)、3万5683ページ(同5958ページ増)。前年より多少増えたが、11〜13年と比べると少ない。震災で公私共に色々あった11年が149冊だったことを考えると、時間的にも精神的にも余裕のある時より、余裕のない時の方が本に逃げ込む傾向があるように思う。
飛び抜けて強い印象を残した本は無いが、良い本は多かった。
ノンフィクションでは、岡田喜秋「定本日本の秘境」、高野秀行「恋するソマリア」、高山文彦「どん底 部落差別自作自演事件」、佐藤清彦「土壇場における人間の研究 ニューギニア闇の戦跡」、小熊英二「生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後」、小林和彦「ボクには世界がこう見えていた 統合失調症闘病記」、オリバー・サックス「妻を帽子と間違えた男」、アブドルバーリ・アトワーン「イスラーム国」など。
小熊英二「生きて帰ってきた男 ―ある日本兵の戦争と戦後」
著者の父の半生を聞き取りでまとめたもの。小熊英二の父、謙二は敗戦後にシベリアに抑留された経験を持つが、その生涯は平均的なもの(それは典型的なイメージ通りの人生ということを意味しない)で、決してドラマチックではない。だからこそ、一人の個人史から時代を描く試みが成功している。
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