松井今朝子「仲蔵狂乱」
孤児の身の上から歌舞伎の大看板まで駆け上がった初代中村仲蔵の生涯を描く。どん底の下積み生活から苦難の末、座頭、千両役者に。江戸三座の興亡から、団十郎、幸四郎といった他の大名跡を巡る役者達の思惑、陰謀、さらに田沼意次の出世、失脚、度重なる大火、飢饉、米価の上昇、打ち壊しといった時代背景も描かれ、ただの人間ドラマにとどまらない緊張感がある。普段、時代小説はほとんど読まないのだけど、かなり引き込まれた。

読んだ本の記録。
柴崎友香「その街の今は」
何気ない日常を描くという、よくある感じの小説だが、大阪の街に対する愛情に富んでいて読んでいて温かい気持ちになる。それもありがちなデフォルメされた“大阪らしい大阪”ではなく、日本中共通するような都市の情景に、そこで生まれ育ったという愛着を滲ませる。
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三宅周太郎「続・文楽の研究」
昭和初期に書かれた評論と随筆集。豊竹山城少掾、吉田栄三ら名人の逸話や、文楽の危機について。
著者は後継者難から文楽の未来を悲観しつつ、歌舞伎などに比べて往時の形態、技芸を忠実に現在に伝えているとその価値を高く評価している。当時既に衰退著しかった淡路人形浄瑠璃についての記述もあり、芸が変わらずに受け継がれてくることの難しさを思わされる。
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