モハメド・オマル・アブディン「わが盲想」
むちゃくちゃ面白い。盲目のスーダン人留学生(といっても、歳もセンスも既におっさん)が、19歳で日本に来てからを綴ったエッセイ。寿司と歌謡曲が大好き、野球はカープ(後で弱いことに気づいてちょっと後悔)。日本の文化にどっぷりと浸かりつつ、客観性も失わない絶妙のセンス。全盲で漢字を使いこなすことだけでも凄いのに、おやじギャグに自虐、ノリツッコミを交えた文章。他言語でこれほどのユーモアを身につけられるとは。なんだかいろいろな希望を感じられる一冊。
読んだ本の記録。
ロメオ・ダレール「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか ―PKO司令官の手記」
原題は「Shake Hands with the Devil」。この本をもとにした同名ドキュメンタリーを見たことがあるが、まさか邦訳されるとは。
94年、国民の1割に当たる約80万人がたった100日の間に虐殺されたルワンダ。悲劇の記録は邦訳も含めて多く出ているが、背景を丁寧に分析した本は少ない。これは、当時、目の前で始まった虐殺を傍観するしかなかった国連平和維持軍の司令官による手記。徐々に緊張感が高まる中、国連と国際社会がいかにルワンダを無視したのかの貴重な証言となっている。
「私たちは同じ人間なのだろうか? あるいは人間としての価値には違いがあるのだろうか?」
“なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか ―PKO司令官の手記” の続きを読む
菅原出「民間軍事会社の内幕」
兵站だけではなく、訓練、軍事作戦まで担うPrivate Military Company。国家が表立って行えない分野や、民間の方が効率よく専門性を高められる分野から始まったが、現在はコストカットや人員不足を補うため、かつての軍隊の一部を担う形で欠かせない存在となっている。
正規兵の訓練や、捕虜の尋問まで“外注”する実態は日本からは想像しがたいが、PR会社がメディアや政治家を誘導して世論を形成し、PMCが大量動員されて戦争を遂行する新たな軍需産業の仕組みがイラク戦争を経て出来上がりつつある。
“民間軍事会社の内幕” の続きを読む
張競「中華料理の文化史」
文化、風土と切っても切り離せない「食」だが、その歴史は意外なほど浅い。古来、東西南北の民族が交錯し、支配層も入れ替わってきた中国では食習慣の変化も大きかった。
“中華料理の文化史” の続きを読む