田辺聖子「私本・源氏物語」
もし源氏物語が現代の娯楽小説や漫画として書かれていたら、あるいは近世以降の草双紙で書かれていたら、こんなノリかもしれない。光の君を従者の目から描き、雅という視点に囚われず、好色という要素をうまく抽出して思わず笑ってしまう面白い小説に仕上げている。登場人物のキャラが立っていて皆魅力的。いい意味で突っ込みどころ満載。
読んだ本の記録。
岡田喜秋「定本 日本の秘境」
経済成長の波がまだ地方に及んでいない昭和30年代前半に書かれた紀行文。秘境とは書いているものの、人跡未踏の地ではなく、あくまで人間の住む土地。九州脊梁山地から、神流川、大杉谷、佐田岬、襟裳岬…。中宮、酸ヶ湯、夏油といった温泉の往時の姿も興味深い。
宮本常一は「自然は寂しい。しかし人の手が加わるとあたたかくなる」と書いたが、まさにその“あたたかな風景”を求める旅。
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加藤文太郎「単独行」
“孤高の人”として知られる加藤文太郎(1905~36)。戦前、パーティーを組むのが常識だった登山に単独で挑み、冬季槍ケ岳などで数々の単独登頂記録を残して「不死身の加藤」とも呼ばれた。
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