乙一「GOTH」
猟奇的な殺人に興味のある少年と少女の物語。主人公の少年が、自分が異常=特別という幻想に囚われていて、いわゆる中二病をくすぐる設定。大人として読むとそれは稚さとして気になってしまうが、中学生くらいで読んでいたらはまったかも。
読んだ本の記録。
フィリップ・ロス「さようならコロンバス」
アメリカらしい雰囲気に満ちた青春恋愛もの。今や超大御所のイメージがある著者だが、この作品は若く瑞々しい。ひと夏の恋の始まりから終わりまで。よくあるプロットながら、背景にアメリカにおけるユダヤ人社会の姿が書き込まれていて、主人公が働く図書館に通う黒人少年の描写など細部も印象的。普遍的で、かつ唯一無二。
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ローラン・ビネ「HHhH」
タイトルはHimmlers Hirn heißt Heydrich(ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる)という言葉から。ハイドリヒの暗殺事件を題材にしているが、一般的な歴史小説の文体をとらず、語り手が頻繁に登場し、叙述の悩みを吐露するメタ構造をとっている。
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松井今朝子「幕末あどれさん」
タイトル(adolescents)通り幕末を舞台とした青春小説。といってもありがちな志士の話ではない。侍になじめず、芝居作者に弟子入りする青年と、部屋住みの身から立身出世を目指し、陸軍所に通って結果的に戊辰戦争に身を投じる青年。忠臣が逆賊となり、人も社会も目まぐるしく変わっていく。遠く長州で戦争が始まり、他人事だった江戸の町にもやがて戦火が迫る。価値観が転倒し、先の見えない時代に生きる人々の悩みが現代にだぶる。いつの時代だって、普通の人が普通に生きて社会に翻弄された。もし自分がこの時代に生きていたら、というリアルな実感を与えてくれる作品だった。芝居町の描写は著者ならでは。