井上ひさし「手鎖心中」
言葉遊びの得意な井上ひさしらしい軽妙な時代小説。大店の若旦那が戯作者目指して自ら手鎖の刑を望み、心中事件を起こす表題作と、もう一篇。ドタバタを通じて、どこか現代を生きる自分自身を顧みさせられるのがこの人らしい。近世の戯作者の姿を通じて、現代の物書きの覚悟を問うているようにも思える。
読んだ本の記録。
柴崎友香「その街の今は」
何気ない日常を描くという、よくある感じの小説だが、大阪の街に対する愛情に富んでいて読んでいて温かい気持ちになる。それもありがちなデフォルメされた“大阪らしい大阪”ではなく、日本中共通するような都市の情景に、そこで生まれ育ったという愛着を滲ませる。
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