菅野完「日本会議の研究」
みんな知っているのに、みんなよくは知らない「日本会議」。そのルーツが新興宗教「生長の家」の学生運動にあり、現在もその人脈で政権を取り囲んでいることを丹念な資料調査で明らかにした労作。
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読んだ本の記録。
菅野完「日本会議の研究」
みんな知っているのに、みんなよくは知らない「日本会議」。そのルーツが新興宗教「生長の家」の学生運動にあり、現在もその人脈で政権を取り囲んでいることを丹念な資料調査で明らかにした労作。
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山本七平「『空気』の研究」
日本の社会は「空気」と「水」でできている。空気を読むことと、水を差すこと。判断を空気に任せてしまうことは、結局誰も責任をとらないことにつながる。出撃が無謀だというデータが揃っていたのに出撃し沈んだ戦艦大和から現代に至るまで、事例は枚挙にいとまがない。「そうせざるを得なかった」で突き進む日本社会。水を差すことは本質的な反省を含まず、空気の支配を強化している。
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伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」
“見る”ということから考える身体論。
全盲という状態を、見えている状態を基準に「視覚情報の欠如」として捉えるのではなく、「視覚抜きで成立している身体」として考える。情報が少ないぶん自由であるという視点は目からうろこ。
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守誠「ユダヤ人とダイヤモンド」
宝石の代表的存在とも言えるダイヤモンドだが、その価値は希少性に由来するのでは無い。デビアスによる採掘の独占、徹底した販売統制を経て、二流の石の価値が作られていった。
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小林よしのり、中森明夫、宇野常寛、濱野智史「AKB48白熱論争」
メンバーの名前すらほとんど分からない立場で読むと、引いてしまうくらい熱のこもった対談(褒め言葉です)。
推す=成長を眺める楽しみは劇団など他の集団でもあるし、序列システムなどの完成度は宝塚の方が高いだろう。それでも、人気と金の相関性を隠そうとしない、それによってかえってオープンな公平性が保たれているというところに戦略の新しさがある。金で買える1票の方が思いが込められるとの言葉は民主主義の逆説として面白い。
AKB以前のアイドルグループが“一部を見せる”というフェイクドキュメンタリーだったのに対し、そういった作り込みをしないでソーシャルメディアに物語作りを委ねてしまうという根本的な違いにも気付かされた。
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン「知の逆転」
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックスの3人のインタビューは刺激的でとても面白い。
テクノロジーの変化が加速し、社会における高齢者の役割が不明確になってきている。資本主義という概念は空虚で、多くの新技術は経済の公共部門から生まれ、最も市場原理に純粋な金融こそ最も機能不全に陥りやすい。音楽は他の記憶よりも深く脳に残されている……などなど。
残りの3人のインタビューは、それぞれの専門分野の話にうまく切り込めていなくて少し物足りない印象。そして専門外の話は少し説教臭い。
大島堅一「原発のコスト ‐エネルギー転換への視点」
原発のコストは、電力会社にとっては確かに安い。それはコストとリスクを未来へ先送りすることと、発電に直接関わる費用以外を、電源三法交付金などで国の負担とすることで、経営の外側に追いやっているからだろう。事故に伴う賠償コストを除いたとしても、本来なら使用済み核燃料などのバックエンドコストや高速増殖炉などに費やされる関連コストは考慮に入れないといけない。
もちろん原発を無くしても、これらの関連コストはすぐに解消されず、短期的には化石燃料の焚き増しや自然エネルギーの開発コストも含めて非常に高くつくことになる。ただ原発が安いという欺瞞のもとに政策を進めていくのではなく、本来のコストとリスクを見極めて判断していく必要がある。