千早茜「男ともだち」
主人公の女に対して同棲中の恋人が漏らす「男ともだちか」「いや、なんかずるい響きだなって」という言葉に物語の要素が凝縮されている。とにかくいろいろとずるい。序盤は「あとかた」のように器用な印象が先に立ってしまったが、イラストレーターである主人公の創作に対する悩みも含めて、著者自身の切実さのようなものが感じられ、だんだんと引き込まれた。
読んだ本の記録。
エリック・ワイナー「世界しあわせ紀行」
幸福の探求は不幸の主たる原因の一つ。それを承知で著者は“幸せな土地”を求める旅に出る。
GNHを掲げるブータン、税金の無いカタール、極寒のアイスランド、マイペンライのタイ、インドのアシュラム……
幸せな人と不幸な人を分ける境はどこにあるのだろう。そしてそれに社会制度や文化、風土が影響を与えるのだろうか。そもそも幸福こそが最も価値あるものなのか。
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村田喜代子「龍秘御天歌」
慶長の役で朝鮮から日本に渡った陶工一族の物語。
日本で苗字帯刀を許されるほど重用され、偉大な職人としての地位を築いた長の死に、村を挙げての盛大な葬儀の準備が進む。その日本式の弔いに対し、百婆と呼ばれる妻はクニの弔いにこだわる。これからも日本で生きていかないといけない長の弟と息子たちは、百婆と住職や町役との間で複雑な立場に追い込まれる。
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渡辺保「日本の舞踊」
舞踊という最も言葉で表現しにくい芸能をいかに語るか。
著者は「身体の声」という言葉を使う。これだけでは色々な文脈で使われる表現のため、多様に理解できてしまうが、その声とは何かを、井上八千代や友枝喜久夫ら名人の芸を比較して丁寧に説明する。
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宮藤官九郎「きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で) 」
宮藤官九郎初の小説と銘打っているが、読んだ印象は文体も含めてかなりエッセイに近い。
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