桂春団治

富士正晴「桂春団治」

戦前の落語界で一世を風靡した桂春団治の評伝。上方落語を巡る状況は今に至るまで時代とともに目まぐるしく変わっており、戦前と刊行(1967年)当時のそれぞれの空気が感じられて興味深い。
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ネコババのいる町で

瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」

奔放な母に捨てられるようにして叔母と祖母のもとに預けられ、二人と隣人のネコババらに見守られて少女は育つ。力まず軽やかな筆で、幼少期の思い出の断片を綴っていく。自分とは全く違う境涯の主人公だけど、不思議と共感し、引き込まれる。こうした作品は意外と少ない。
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「日本人の神」入門

島田裕巳「『日本人の神』入門 神道の歴史を読み解く」

日本には八百万の神がいるといっても、自分も含めて大抵の人は、せいぜい数柱の神の名前しか言えないのではないか。宗教というと伝統的なものと考えがちだが、日本の神々のあり方は古来、大きく変化してきた。仏教伝来、神仏習合、神仏分離などの変遷以外にも、祀られ方も神々の関係も今と往時では大きく異なっている。仏と神、神と霊、さまざまなものを習合させ、日本人の信仰は形成されてきた。
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花まんま

朱川湊人「花まんま」

少し不思議な体験の中に、人生の悲哀を滲ませた短編集。舞台は昭和の大阪の下町。子供の視点が瑞々しく、どこか懐かしい。表題作や「トカビの夜」、「送りん婆」など、甲乙付けがたく、短編小説の見本のような珠玉の6編。

人体模型の夜

中島らも「人体模型の夜」

中島らもによるホラー短編集。短い中に、ぞっとするオチを盛り込んだ秀逸な作品群。型破りな私生活で知られる人だけど、「ガダラの豚」のようなB級エンタメ(良い意味で)から、私小説的な作品、こうしたホラー、おおらかなエッセイまで、作家としての多才ぶりにも驚かされる。生きて老いを迎えていたら、どんな作品を書いただろう。

ウイルスは生きている

中屋敷均「ウイルスは生きている」

生命とは何か、について考えさせられる刺激的な1冊。

ウイルスは教科書的な知識では非生命とされる。単体で代謝機能を持たず、細胞に入らなくては増殖できない。ただ、生命とされているものにも代謝を外部環境に頼るものがあるし、生命と非生命の境界は思うほどには明確ではない。
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