安岡章太郎「ガラスの靴・悪い仲間」
初期短編集。戦争を挟んで青春時代を過ごし、明確な価値基準や希望の存在しない日常を見つめる著者の視線は、村上春樹など二十世紀後半の文学作品にも通じる現代性がある。
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読んだ本の記録。
安岡章太郎「ガラスの靴・悪い仲間」
初期短編集。戦争を挟んで青春時代を過ごし、明確な価値基準や希望の存在しない日常を見つめる著者の視線は、村上春樹など二十世紀後半の文学作品にも通じる現代性がある。
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井出幸男「宮本常一と土佐源氏の真実」
宮本常一が記した文章で最も有名な「土佐源氏」。老博労の聞き書きで、前近代の庶民の性に関する民俗学資料として評価されてきたが、そこに創作、脚色が混ざっていることも以前から指摘されてきた。著者は、宮本常一の若き日の恋愛遍歴にまで踏み込んで、土佐源氏に投影された宮本自身の体験を探っていく。
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角田光代「ツリーハウス」
家族の物語。満州で出会った祖父と祖母は生きるために戦争から逃げた。敗戦後、戻る場所もなく、根を失ったままバラック街の一角で中華料理屋を始める。子供たちが育ち、孫たちが生まれ、それぞれに不器用に何かを失い、何かを得ながら生きていく。時に迷い、時に「大丈夫だ」というよく分からない感覚に流され、子供は大人に、大人は老人になっていく。そうしていつの間にか、根を失ったはずの自分たちの人生が根を張っていることに気付く。
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平野啓一郎「決壊」
「悪魔」を名乗る人物からのメッセージが添えられたバラバラ死体が各地で見つかる。悪魔は社会からの「離脱」を呼びかけ、無差別殺人が連鎖する。中盤まではミステリー風の物語展開だが、ミステリーに期待するような種明かしは訪れない。過剰な会話など、むしろドストエフスキー的な思想小説。登場人物一人一人の内面を多視点で徹底的に掘り下げていく叙述は最近の作家では珍しい。
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中上健次 電子全集
待ちに待った電子全集の刊行が始まった(現在3巻まで)。
高校時代に当時手に入る作品は一通り読んだものの、絶版や文庫未収録などで未読の作品も結構あるため嬉しい。巻末の担当編集者や中上紀による文章は短いながらも必読の内容。中上の人物像などはそれなりに知られてはいるものの、身近な人々の文章でそれを読むとやはり生々しい。
担当編集者として「岬」を生みだした高橋一清氏に「初めて俺を人間あつかいしてくれた」と泣きじゃくったことや、芥川賞受賞直後、中上の暴力が原因で家族が家を出ていたことなど。
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