平野啓一郎「決壊」
「悪魔」を名乗る人物からのメッセージが添えられたバラバラ死体が各地で見つかる。悪魔は社会からの「離脱」を呼びかけ、無差別殺人が連鎖する。中盤まではミステリー風の物語展開だが、ミステリーに期待するような種明かしは訪れない。過剰な会話など、むしろドストエフスキー的な思想小説。登場人物一人一人の内面を多視点で徹底的に掘り下げていく叙述は最近の作家では珍しい。
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読んだ本の記録。
平野啓一郎「決壊」
「悪魔」を名乗る人物からのメッセージが添えられたバラバラ死体が各地で見つかる。悪魔は社会からの「離脱」を呼びかけ、無差別殺人が連鎖する。中盤まではミステリー風の物語展開だが、ミステリーに期待するような種明かしは訪れない。過剰な会話など、むしろドストエフスキー的な思想小説。登場人物一人一人の内面を多視点で徹底的に掘り下げていく叙述は最近の作家では珍しい。
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中上健次 電子全集
待ちに待った電子全集の刊行が始まった(現在3巻まで)。
高校時代に当時手に入る作品は一通り読んだものの、絶版や文庫未収録などで未読の作品も結構あるため嬉しい。巻末の担当編集者や中上紀による文章は短いながらも必読の内容。中上の人物像などはそれなりに知られてはいるものの、身近な人々の文章でそれを読むとやはり生々しい。
担当編集者として「岬」を生みだした高橋一清氏に「初めて俺を人間あつかいしてくれた」と泣きじゃくったことや、芥川賞受賞直後、中上の暴力が原因で家族が家を出ていたことなど。
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菅野完「日本会議の研究」
みんな知っているのに、みんなよくは知らない「日本会議」。そのルーツが新興宗教「生長の家」の学生運動にあり、現在もその人脈で政権を取り囲んでいることを丹念な資料調査で明らかにした労作。
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マルク・レビンソン「コンテナ物語―世界を変えたのは『箱』の発明だった」
地味なタイトルだが、ノンフィクションの名著として名高い一冊。
「コンテナ」が本格的に登場したのは二十世紀中盤。コンテナは物流コストを劇的に下げ、世界の経済を大きく変えた。箱での輸送は19世紀以前から試みられていたが、陸海共通のコンテナという仕組みはトラック運送で身を興した一人の男の発想だった。そのマルコム・マクリーンの生涯を軸に、社会と経済の変化を追っていく。
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山口雅也「生ける屍の死」
死者が次々と蘇るという世界設定からして異色のミステリー。主人公が一度死んでからが本番という物語もぶっ飛んでいる。死者が蘇るため、アリバイも、証拠も、さらには動機も、全てが発想から変わってくる。普通のミステリーに飽きたという人には非常におすすめ。
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田中康弘「日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?」
マタギの取材を長年続けてきた著者が、西表島の猪から礼文島のトドまで、各地の猟に同行したルポ。日本人は決して農耕一色の民族ではない。むしろ何でも食べる。猟の方法も興味深いが、何より、その後の解体、調理の生き生きとした描写に引き込まれた。
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