猪熊隆之「山岳気象大全」
無茶苦茶ためになる一冊。山岳地帯でどう天気が変化していくのか、地形による影響も含めて解説していてとても分かりやすい。
山の天気は天気予報だけでは頼りないと思いつつ、これまで漫然と地上天気図を眺めるだけだったけど、高層天気図や地形、実際の雲の様子を考慮に入れた天気の見方が分かり、目からうろこ。過去の遭難事故の多くを前後の天気図と比較して検討しているのも勉強になる。2年前の出版だけど、もっと早く読んでいれば。

読んだ本の記録。
ジャイルズ・ミルトン「奴隷になったイギリス人の物語」
欧州各地からモロッコに連れ去られ、奴隷となった人々の記録。黒人奴隷の影に隠れた歴史の盲点。100万という数字や記述の正確さは判断できないが、この事実を抜きにしては、当時の白人のイスラム観というか、ムーア人観は理解できないのだろう。
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古本で購入。“性”の遠野物語。
記録に残らないぶん、より不変なものと考えられがちな性風俗。この本の出版は昭和の半ば、紹介されている習俗は昭和初期に記録されたものが中心だが、旅人に身内を夜伽に出す貸妻、意味不明な柿の木問答など、現代からすればかなり衝撃的なものばかり。
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斎藤美奈子「冠婚葬祭のひみつ」
冠婚葬祭が現在の形になった歴史を取り上げた第1章が面白い。いかにも伝統っぽい神前式も、大正天皇の御婚儀を経て神社が結婚ビジネスに参入したことに始まる。葬儀も現在の告別式のルーツは中江兆民。どちらもせいぜい100年の歴史しかない。
桃と端午の節句が下火になる一方、宮参り、お食い初め、一升餅などのイベントの実施率は最近の方が高いというのも面白い。住宅事情や経済状況で、行いやすいイベントへと「伝統行事」は移っていく。
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宮本常一、安渓遊地「調査されるという迷惑 ―フィールドに出る前に読んでおく本」
善意の及ぼす結果や範囲に人は無自覚になりやすい。宮本常一の文章は1章だけだが、生涯を歩く、見る、聞くことに費やした宮本の問題意識が込められていて心に残る。
「調査というものは地元のためにはならないで、かえって中央の力を少しずつ強めていく作用をしている場合が多く、しかも地元民の人のよさを利用して略奪するものが意外なほど多い」
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