笠井潔「オイディプス症候群」
ミステリーだけど、現象学的な思索や蘊蓄がこれでもかというほど詰め込まれ、上巻は50ページで済むストーリーを500ページ書いている印象を受けるほど。悪い意味ではなく。
“オイディプス症候群” の続きを読む
読んだ本の記録。
笠井潔「オイディプス症候群」
ミステリーだけど、現象学的な思索や蘊蓄がこれでもかというほど詰め込まれ、上巻は50ページで済むストーリーを500ページ書いている印象を受けるほど。悪い意味ではなく。
“オイディプス症候群” の続きを読む
服部龍二「広田弘毅 ―『悲劇の宰相』の実像」
「落日燃ゆ」では、広田弘毅は筋の通った人物で、傑出した外交官として描かれるが、外相就任後の動きを丁寧に見ていくと、彼も典型的な、平凡な政治家の一人に過ぎなかったという印象を受ける。協調外交や平和主義への志向は確かに強かったのだろうが、時流には逆らえなかった、というより、近衛内閣のポピュリズムのもとで時流に対して逆らおうとしなかったのではないか。
もちろん、行動や発言を丁寧に追っていくと、凡庸ではない人間なんて歴史上にいない。というより、人の凡庸さを見つめるのが歴史学だろう。そうした意味で、この本に書かれている広田の“凡庸さ”は、現代の政治を考える上でも重要な視座と言える。
「風姿花伝」
観阿弥の教え、世阿弥の書。
世阿弥は能の美を花に喩え、花を知るために種=技芸を知るよう説く。
「花のあるやうをしらざらんは、花さかぬ時の草木をあつめてみんがごとし」
“風姿花伝” の続きを読む
徳永京子、藤原ちから「演劇最強論」
若手〜中堅劇団を中心とした演劇ガイド。以前は全く興味がなかった世界だが、最近足を踏み入れて、他のジャンル以上に今なお創造性豊かな作品が作られていることに驚いた。20世紀を通じて他の表現手法の鉱脈が徹底的に掘られ、停滞感が漂う中、それらの成果がよりプリミティブな芸術である舞台に環流しているのかもしれない。
“演劇最強論” の続きを読む