戦場のハローワーク

加藤健二郎「戦場のハローワーク」

軍事ジャーナリストや戦場カメラマンになるには……を紹介する形で著者の戦場体験を書いたルポ。パフォーマンスなのか自己顕示欲が強いのか、「戦争はチャンス」「楽しい」と言い切ってしまう偽悪的な姿勢が鼻につく。でも、こんな人もいるのかと開き直って読めば面白い。

戦場にいるのも人間なら、普通の青年も人格破綻者もいて、そこに“日常”が生まれる。戦場が悲惨一色ではないことを伝える意味では出色の出来。

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

佐野眞一「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」

「月刊PLAYBOY」の連載をまとめた約650ページの大作。沖縄やくざの系譜や琉球独立論、知事選の泡沫候補など、忘れられた沖縄の現代史を訪ね歩く。

沖縄を“被害者”として神聖化するのではなく、戦果アギヤーや軍用地主の存在、奄美出身者への苛烈な差別なども取り上げている。
“沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史” の続きを読む

晴れた日は巨大仏を見に

宮田珠己「晴れた日は巨大仏を見に」

日本各地に点在する巨大仏を訪ねる旅。誰がどうして建てたのか、のようなガイドブック的視点はほぼ皆無で、ただひたすら風景とのミスマッチを楽しんでいく。

宮田珠己本としてはややパワーに欠け、「私の旅に何をする」のようなユニークさ、有無を言わせないノリが少ないのが残念。面白いけど。

民俗学への招待

宮田登「民俗学への招待」

民俗学の大家、宮田登氏のコラム。年中行事や民間信仰を始め、学校の怪談など都市民俗学にも触れ、興味深いテーマを多く取り上げている。ただ、ダブりも多いし、どれも尻切れトンボな印象。あとがきで新聞に掲載したコラムと知って納得。「民俗学への招待」と言うタイトルから入門書と勘違いしたが、エッセイと考えれば、それなりに面白い。

告白

町田康「告白」

あまりに思弁的で、百姓としても侠客としても生きられず、身を滅ぼしていく主人公・熊太郎。

「河内十人斬り」の実話を基にした一風変わった時代小説。「告白」のタイトルどおり、主人公の内面描写が800ページ延々と続くが、河内弁の饒舌な語り口で冗長さは感じさせない。

「『日本』とは何か」日本の歴史00

網野善彦「『日本』とは何か」日本の歴史00

7世紀末に生まれた「日本」は、決して農業中心の自給自足の歴史を歩んできたわけではなかった。国家という括りから離れ、「日本」の土地に住む人間の歴史を問い続けた網野善彦のエッセンスが詰った一冊。日本海を巨大な内海として捉える視点などはっとさせられる。

名著「日本の歴史をよみなおす」などに比べ、晩年の焦りか主観的な記述も目立つ。網野は間違いなくこの土地を愛していたが、日本という国政への憎悪とも言える記述には抵抗を感じる人もいるだろう。

東北学 忘れられた東北

赤坂憲雄「東北学 忘れられた東北」

近代日本と共に出発した柳田民俗学は、稲作を中心とした“瑞穂の国”として「ひとつの日本」を築く試みだった。それは東北の民とアイヌの間に強固な線引きを行い、共通性に目を閉ざした。境界を築くための「民俗学」から抜け出した時、縄文以前から人が住み、南北の文化が重なり合う東北の姿が見えてくる。

「忘れられた日本人」を著した宮本常一が晩年たどり着きつつあった“いくつもの日本”を見いだす民俗学へ。示唆に富んだ書。