浄瑠璃を読もう


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橋本治「浄瑠璃を読もう」

浄瑠璃の代表作を読み解く。

歴史上の出来事を題材に、というよりも自由に加筆・改変が可能なパーツとして、好き勝手に物語を組み立てるという作劇法は、現代にも通じる日本の歴史観、物語観かも。

「歴史は、江戸時代という現在が抱えているドラマの種を植えつけるための土台になるだけなのだ」

銀の匙

中勘助「銀の匙」

明治生まれの著者が子供時代を綴った自伝的小説。友人との出会い。別れ。自分が「びりっこけ」だと気づいた痛み。日清戦争や修身の授業で感じた周囲とのずれ。教師への反発。とてもシンプルな文章ながら、前半から後半へと目線の高さが自然に変わっていって、著者自身がどこまで意識したのか分からないが、極めて巧みな印象も受ける。子供の目線で文章を書くのは難しい。これを二十代で書いた感性は相当なもの。どのページを読んでも、はっとさせられる。

世界の食べもの 食の文化地理

石毛直道「世界の食べもの 食の文化地理」

とても面白いけど、アジア、オセアニア、北アフリカ以外の地域についてはほとんど触れられていないのがちょっと残念。取り上げられている地域については丁寧で読み応えがあるだけに、タイトルに相応しい完全版が読みたい。

馴染みがある中国料理も韓国料理もよく考えたらイメージどまりで、食文化としては実際には知らないことが多いと痛感。

マシアス・ギリの失脚

池澤夏樹「マシアス・ギリの失脚」

物語の筋は既にタイトルに示されている。神話も含めて一つの世界を作り上げる試み。

著者自身が「百年の孤独」のようなものを書きたかったと別の場所で書いていたが、「族長の秋」「予告された殺人の記録」を思わせる部分もある。ただ全体としては、ガルシア・マルケスのようなものを書こうとして、結果的に辿り着いたのは別の物という印象が強い。池澤夏樹の思想、世界観がはっきりと示されていて、日本を“宗主国”とする架空の島国を通じて、日本を描いた作品とも言える。

ハムレット

シェイクスピア「ハムレット」

堂々巡りをする復讐者、ハムレット。今読むと悲劇というより一種の不条理劇という印象が強く、安易な共感は寄せ付けない。長い独白で表現されるハムレットの心境、登場人物のほとんどが一気に死んでいく終盤の構成も圧巻。

脳はこんなに悩ましい

池谷裕二、中村うさぎ「脳はこんなに悩ましい」

脳の話というより、脳を糸口に遺伝子や進化、心のあり方など、色々な話を行ったり来たり。つまみ食い的な内容だけど、興味深いエピソードが山盛りで読み応えあり。池谷裕二と中村うさぎは一見不思議な組み合わせだけど、話がかなりかみ合っていてレベルの高い対談本。下ネタも思ったほど無い。

一の糸

有吉佐和子「一の糸」

芸道一筋に生きた文楽三味線弾きの露沢徳兵衛と、その後添えとして生涯をささげた酒屋の箱入り娘の茜の一生を、敗戦、文楽会の分裂、鶴澤清六と山城少掾の決別など、現実の出来事をモデルに交え描いた長篇小説。
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