アヘン王国潜入記

高野秀行「アヘン王国潜入記」

当時世界最大の阿片産地だったゴールデントライアングルの農村で、芥子を栽培しながら7カ月過ごした破格の記録。

村に溶け込み、しかもアヘン中毒の“駄目な村人”に。

ビルマの少数民族についての貴重な報告でもある。ジャーナリスト的な思考に染まった人間にはこういうものは書けない。

どくろ杯

金子光晴「どくろ杯」

絶望的な困窮の中、妻との問題を抱え、長い放浪の旅が始まる。抑揚の無い淡々とした筆致ながら、人の業の深さと生の力強さに溢れている。はっとするような言葉使いも随所に。

「唇でふれる唇ほどやわらかなものはない」

「うんこの太そうな女たちが踊っていた」

貧困旅行記

つげ義春「貧困旅行記」

鄙びた温泉地を旅し、侘びしい旅籠で煎餅布団にくるまる。世の中から捨てられたような気持ちになり、そこに安らぎを感じる。タイトルから想像されるような貧乏旅行記ではなく、内容も淡々としているが、この時代の日本を旅してみたかったなと思わせる味がある。

「貧しげな宿屋で、自分を零落者に擬そうとしていたのは、自分をどうしようもない落ちこぼれ、ダメな人間として否定しようとしていたのかもしれない。(中略)自分を締めつけようとする自分を否定する以外に、自分からの解放の方法はないのだと思う」

ヤノマミ

国分拓「ヤノマミ」

南米アマゾンの先住民、ヤノマミ。

生まれた子を精霊としてそのまま天に返す場面に衝撃を受ける。死生観などの価値観は、想像ができないほど我々日本人と隔たっている。それでも同じ様な感情を抱く。それが人らしさなのだろう。
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わたしの旅に何をする。

宮田珠己「わたしの旅に何をする。」

活字で笑うことはめったにないけど、この人の文章は思わず吹き出してしまう。内田百閒の「阿房列車」的な面白さ。

冒頭から「会社なんか今すぐ辞めてやる、そうだ、今すぐにだ、という強い信念を十年近く持ち続けた意志の堅さが自慢である」とのあほらしさ。

幻獣ムベンベを追え

高野秀行「幻獣ムベンベを追え」

コンゴ奥地に生息するというモケーレ・ムベンベ。“誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く”著者の早大探検部時代の原点。

無謀だからこそ切り開ける世界がある。

イスラム飲酒紀行

高野秀行「イスラム飲酒紀行」

飲んで飲まれて見えてくるイスラム社会のもう一つの顔。人生はちょっと顰蹙を買うくらいが面白い。

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

角幡唯介「空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む」

チベットのツァンポー峡谷に残された未踏の5マイルに挑んだ記録。

石川直樹は神田道夫を題材に「最後の冒険家」という本を書いたが、この本からは現代でも“冒険”はし得るという強い思いを感じる。それはかつてに比べればずっと個人的なものだけど。