フェルディナント・フォン・シーラッハ「犯罪」
「犯罪者」の人生を描く連作短編集。哀しみ、希望、不気味さ、いろいろな要素があるけど、情景描写がほとんど無く、多くの人の人生を淡々と語っていくその文章の速度に引き込まれる。久しぶりに海外の短篇集で本当に面白いと思った。登場人物に移民がたくさん出てきて、非常に現代ドイツ文学らしい作品でもある。

読んだ本の記録。
高橋哲夫「河野広中小伝」
河野広中は、明治・大正期の政治家で自由民権運動の活動家。福島に住んだり、日本史を学んでいればよく聞く名前だろうけど、今となっては一般的にはそれほど知名度は無いかもしれない。
福島は自由民権運動の先進地であると共に、国会より早く全国初の民会(公選議会)が設置された県でもある。明治14年には議長だった河野広中が中心となって、普通選挙を国に提言している。実際に普選法が成立するより半世紀近く早い。
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村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」
3部作や他の作品は何度か読み返してきたが、この作品はずいぶん久しぶり。
後日譚という自由さからか、登場人物のキャラ作りも含めて、愉悦的とも感じられるほど饒舌な語り口。
これ以前の作品で描かれたぼんやりとした喪失感は、はっきりと死という形で周りにあふれ出す。同時にこれまでディスコミットメントを徹底し、表面的には無感動だった主人公は現実への執着と焦燥感を見せる。
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小澤征爾、村上春樹「小澤征爾さんと、音楽について話をする」
クラシックにはそれほど詳しくないし、小澤征爾指揮の演奏を聴き込んでいるわけでもない。それでも、このインタビューにはかなり引き込まれた。
カラヤンやバーンスタインとの思い出から、マーラーへのこだわり、サイトウ・キネンでの活動、若い世代への指導……。生涯をかけてひとつの事に打ち込んできた人から出る魅力が言葉の端々に。
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