五十嵐貴久「安政五年の大脱走」
断崖絶壁の山の上、天然の要塞に捉えられた南津和野藩士51人。武士の誇りや友情や恋やその他諸々をストレートに詰め込んだ娯楽時代小説。物語の核となる場面は穴を掘るだけだし、展開にひねりも無いけど、やたらと面白い。
読んだ本の記録。
村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」
3部作や他の作品は何度か読み返してきたが、この作品はずいぶん久しぶり。
後日譚という自由さからか、登場人物のキャラ作りも含めて、愉悦的とも感じられるほど饒舌な語り口。
これ以前の作品で描かれたぼんやりとした喪失感は、はっきりと死という形で周りにあふれ出す。同時にこれまでディスコミットメントを徹底し、表面的には無感動だった主人公は現実への執着と焦燥感を見せる。
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小澤征爾、村上春樹「小澤征爾さんと、音楽について話をする」
クラシックにはそれほど詳しくないし、小澤征爾指揮の演奏を聴き込んでいるわけでもない。それでも、このインタビューにはかなり引き込まれた。
カラヤンやバーンスタインとの思い出から、マーラーへのこだわり、サイトウ・キネンでの活動、若い世代への指導……。生涯をかけてひとつの事に打ち込んできた人から出る魅力が言葉の端々に。
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今田洋三「江戸の本屋さん ―近世文化史の側面」
京都から始まった日本の出版産業。出版点数を見ると18世紀後半、天明から寛政にかけて一気に上方から江戸へと中心を移したことが分かる。ただ江戸期の書商はいずれも明治になると姿を消した。
文化の変遷は出版から見ると質、量とも非常に分かりやすい。紙メディアとともに出版業そのものが岐路に立つ今、改めてその文化的な役割を考えさせられる一冊。
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