玄侑宗久「現代語訳 般若心経」
般若心経大本の現代語訳だが、訳というより解説を加えた一つの作品。著者は臨済宗の僧侶だが、現代的な感覚に基づいた説明で理解しやすい良書。
「色不異空」「色即是空」は日本的な感覚でも共感しやすいが、それに続く「空不異色」「空即是色」をどう捉えるか。そこに諦観にとどまらない大乗仏教の核が詰まっているように思う。
読んだ本の記録。
橋爪大三郎、大澤真幸「ふしぎなキリスト教」
キリスト教というより、ユダヤ教から始まる一神教入門。
人間中心に世界を見る多神教に対し、人間から完全に隔たった神が中心の一神教。神の意志が捉えられないからこそ続く問いかけ。それこそが信仰で、教祖の言葉が全てとなりやすい新興宗教との大きな違いだろう。
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「旅行人165号 世界で唯一の、私の場所 《休刊号》」
一つの時代の終わりといっても大げさではないだろう。この雑誌が無くなってしまうのは本当に本当に寂しい。
最後の特集はライター、写真家、人類学者…etcのエッセイ集。どれも短いけど、それぞれの土地への思い入れが伝わってくる。
もちろん、この世に桃源郷なんてものは無いし、旅行者のセンチメンタリズムに過ぎないかもしれない。それでもそういう場所を持てる、世界には素敵な場所がたくさんあると思えるだけで、ずいぶんと幸せな気持ちになれる。
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