ギッちょん

山下澄人「ギッちょん」

初期の短編集。木訥とした文章だが、独特のリズムと視点を持って書かれており、丁寧に読み解こうとすると途端に行き詰まる。語り手の見ているもの、意識に浮かんだもの以外を読み手は知ることができない。時系列も視点も混濁した文章に身を任せた時、不思議な情景が浮かび上がる。
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日本を降りる若者たち

下川裕治「日本を降りる若者たち」

日本社会は必死にその上に載り続けることを個人に強いる。しがみつくのをやめれば外に落ちてしまう。どこの社会にもそうした部分はあるものだろうけど、日本では一度失敗すると元の場所に戻りにくい。人目を気にせずに生きられる場所が少ない、あるいは見つけにくい。

バックパック旅行を描いてきた著者が、日本社会から降りて東南アジアで暮らすようになった人々の姿を記録したルポ。日本での短期労働で資金を稼ぎ、1年の大半をバンコクで何もせずだらだらと「外こもり」の生活を続ける人々の話が中心だが、積極的にタイで働き、生きることを選んだ人も登場する。
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工学的ストーリー創作入門/物理学的ストーリー創作入門

ラリー・ブルックス「工学的ストーリー創作入門」「物理学的ストーリー創作入門」

 

著者は、考えながら書き、書き直しを重ねる手法(パンツィング)を否定し、物語にも原則があると繰り返し述べる。アウトラインを固めずに書いている作家でも、無意識にその原則に従っているのだと。その上でストーリーを構成するものを「コンセプト」「人物」「テーマ」「構成」「シーンの展開」「文体」の六つのコア要素に分け、それぞれにおける逆らうことができない物理法則を解説する。
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トム・ソーヤーの冒険

マーク・トウェイン「トム・ソーヤーの冒険」

米文学を代表する作品の一つで、最も有名なキャラクターとも言えるトム・ソーヤー。子供向けの抄訳には触れたことがあっても、通読したことがある人はそれほど多くないかもしれない。特に最近では「ハックルベリー・フィンの冒険」の方が文学的な評価が高いこともあり、その影に隠れてしまっている印象もある。
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ストーナー

ジョン・ウィリアムズ「ストーナー」

評判は聞いていたものの、あらすじだけみれば極めて地味な作品で、長く積んだままだった一冊。ある一人の男の一生を淡々と描く。

自他共に認める波瀾万丈の人生を送る人もいるだろうが、多くの人にとって人生とは平坦で、しかし予測はつかないものという印象ではないか。妥協し、流され、目の前の些事に追われ、ふと振り返ると、そうであったかもしれない別の人生が道の両側に幾つも転がっている。
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南の島でえっへっへ

おがわかずよし「南の島でえっへっへ」

 

インドや東南アジアは多くの紀行本が出版されているし、バックパッカーの体験談を綴ったブログの類も沢山ある。欧米やアフリカも書籍では身近な地域だ。一方で太平洋の島々を扱った読み物は非常に少なく、バックパッカー目線の紀行本は皆無に近い。太平洋は貧乏旅行者にとっては広大な空白地帯であり、ほとんど語られることがなかった。
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誕生日の子どもたち

トルーマン・カポーティ「誕生日の子どもたち」

村上春樹訳によるカポーティの短編集。「無頭の鷹」以外は幼年期を描いた作品から選ばれている。カポーティの作品は既存の日本語訳も素晴らしいが、幼年期ものの名品をまとめて読むことができ、「冷血」や「ティファニーで朝食を」では分からない作家の素顔を知ることが出来る。訳文もフラットで読みやすい。
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