西南戦争を体験した古老の話の聞き書き。「苦海浄土」と並ぶ著者の代表作とされながら、絶版で全集以外では手に入りにくかった作品だが、追悼か、大河ドラマ効果か、講談社文芸文庫から再刊された。ノンフィクションというよりは、巫女に喩えられることもある偉大な作家が語り直した文学作品といった方がふさわしい。
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屈辱ポンチ
十数年ぶりに再読。著者の作品は高校生の時に「夫婦茶碗」を読んで爆笑して以来、新刊が出ると手に取ってきた。それまで活字、ましてや小説で声を上げて笑ったことなんてなかったので、小説の面白さを教えてくれた作家の一人でもある。年を重ね、笑いに対して鈍感になった(涙腺は緩くなったのに)せいか、もはや吹き出すことは無かったけど、今読んでもやっぱり面白い。
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転校生
朝起きたら転校していることに気付き、それ以前の記憶は無くしてしまったという生徒が教室に入ってくる。劇中にも登場するカフカの作品を連想させるような不思議な展開だが、その謎を掘り下げていくわけではなく、生徒たちの日常会話がだらだらと続いていく。
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いつも旅のなか
著者の作品を読むようになったのは比較的最近で、バックパッカーのような旅をしていたことや、旅のエッセイを結構書いていることも知らなかった。
旅行記の面白さには二種類あって、一つは自分ができない旅を体験させてくれること、もう一つは自分がした旅を思い出させてくれること。著者のエッセイは後者(団体旅行しかしたことがない人には前者だろうけど)で、等身大の旅の描写に、読みながらうなずくことが多かった。
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人形の家
1879年に発表されたイプセンの名作。近代劇の到来を告げる作品であり、家庭における女性を、意志を持った一人の人間として描いた最初の作品でもある。難しく考えなくても、単純にサスペンスタッチの家庭ドラマとして十分に面白い。
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津波の霊たち 3・11 死と生の物語
リチャード・ロイド・パリー「津波の霊たち 3・11 死と生の物語」
英「ザ・タイムズ」紙の東京支局長による被災地のルポルタージュ。6年にわたる被災地取材の記録であり、津波被害、中でも児童の多くが犠牲になった大川小の遺族の話を中心に据えつつ、共同体や死を巡る日本人の心性をも掘り下げていく。東日本大震災に関する最も優れた記録の一つであると同時に、日本人論、日本文化論としても白眉の内容。
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再婚
新ゴーゴー・インド
インド旅行記のロングセラー。出版社/雑誌の「旅行人」を主宰する著者の原点であり、1980年代後半以降のバックパッカーに大きな影響を与えた一冊。2001年刊行の新版は、86年刊行版に新たなイラストやデータが追加されている。
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昭和の犬
もうひとつのワンダー
「ワンダー Wonder」で描かれなかった三つの物語。後日譚ではなく、前作でいじめっ子として描かれたジュリアンと、幼なじみのクリストファー、優等生のシャーロットの3人の視点で、それぞれの学校生活が綴られる。
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