文楽の女 吉田簑助の世界

吉田簑助、山川静夫「文楽の女 吉田簑助の世界」

お初・徳兵衛(曽根崎心中)、お軽・勘平(仮名手本忠臣蔵)、お染・久松(新版歌祭文)、お半・長右衛門(桂川連理柵)……。
浄瑠璃などの近世文学に登場するカップルの名前は、大抵女性の名が先に語られる。それは物語の主人公が男であっても、究極的には女性の運命を描いていると多くの人が感じるからだろう。

社会の理不尽に絶え、時には運命に抗い、意地を通そうとする姿は男の登場人物以上に存在の光を放つ。その文楽の女たちについて、当代一の人形遣い、吉田簑助の芸談を挟みつつ、魅力を綴る山川静夫のエッセイ集。94年刊行本の新書版。
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マチネの終わりに

平野啓一郎「マチネの終わりに」

どちらに否があるというわけでもないのに、成就しなかった恋愛。
結果的に別の人生を歩むことになった二人がふとした偶然で顔を合わせ、それぞれの日常へ戻っていく「シェルブールの雨傘」のラストシーンは“大人の恋愛物語”の金字塔と言えるだろう。

「マチネの終わりに」で描かれる男女の関係も、成就されなかったが故に、それぞれの人生で大きな意味を持つ。
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言壺

神林長平「言壺」

SFというと、クラークの「幼年期の終わり」や、ホーガンの「星を継ぐもの」、ハクスリーの「すばらしい新世界」、オーウェルの「1984」など、何となく宇宙や文明を描くものと思いがちだが、言語や認識を題材とした“言語SF”と呼ばれるジャンルがある。中には伊藤計劃の「虐殺器官」のようにそれらが高度に組み合わさった作品もある。
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老ヴォールの惑星

小川一水「老ヴォールの惑星」

個人的に、SFはミステリー以上に未開拓のジャンルだけど、たまに読むと刺激を受けることが多い。思考実験の場として、いわゆる“純文学”以上に人間を描いている作品がある。

表題作「老ヴォールの惑星」のほか、「ギャルナフカの迷宮」「幸せになる箱庭」「漂った男」の計4編。どれも傑作。
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雪が降る

藤原伊織「雪が降る」

読み終えて、じんわりと良い作品だったと思う短編小説はそれなりにあるけれど、読んでいる最中に先が気になって引き込まれる物語は、短編ではあまり無い。

「台風」「雪が降る」「銀の塩」「トマト」「紅の樹」「ダリアの夏」の六編。どの作品も、途中で読み進める手を止めることなく読了。フィクションであることをいかした不器用で気障な男たちが格好良い。
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なつかしい芸人たち

色川武大「なつかしい芸人たち」

「麻雀放浪記」の阿佐田哲也のイメージで色川武大の「狂人日記」や「百」といった小説を読むと驚かされるが、さらにこうしたエッセイを読むと、その芸能分野の造詣の深さに再び驚嘆させられる。その上で、こうして著者の人生観は育まれたのだと、読みながらストンと腑に落ちる。
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