西行 魂の旅路 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>

西澤美仁「西行 魂の旅路 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>」

和歌を解するような風雅な心も知識も無いけれど、西行から芭蕉、山頭火に至る旅する歌人が残した歌には幾つか心惹かれるものがある。それは、歌の精神性の高さに感銘を受けるというよりは、身近で分かりやすい感慨を素直な言葉で表現しているからだと思う。
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ジュライホテル バンコクの伝説の安宿

及川タケシ「ジュライホテル バンコクの伝説の安宿」

バンコクの安宿街といったらカオサン通りが有名(今はもう違うかも)だが、90年代半ばまではカオサンに滞在するのは欧米人が中心で、日本人旅行者の溜まり場はチャイナタウンだった。自分は直接その時代を知るわけではないが、楽宮旅社や台北旅社、ジュライホテルの名前は、アジアを旅したことがあるバックパッカーなら聞いたことがある人も多いのではないかと思う。
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フィリピンパブ嬢の社会学

中島弘象「フィリピンパブ嬢の社会学」

新書で、このタイトル。新書に多い「タイトルだけ秀逸」という“出落ち”を警戒して読み始めたが、非常に面白いルポルタージュだった。

真面目な大学院生だった著者は、在日フィリピン人女性を研究テーマとし、論文の題材としてフィリピンパブのことを調べるうちに、ホステスの「ミカ」と恋に落ちてしまう。そのミカとの交際や、家族との出会いを通じて、外国への出稼ぎに頼らざるをえないフィリピン社会と、日本に来るフィリピン人女性たちの置かれた状況が浮き彫りになる。
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世界最低最悪の旅

蔵前仁一編「世界最低最悪の旅」

終わってみれば、旅はトラブルこそが面白い。下痢で悶絶し、ハードな移動で消耗し、行く先々で騙され、たかられ、それでも喉元過ぎれば何とやら。トラブルの無い旅は、きっと印象にも残らない。そんなバックパッカーの失敗談や悲惨な話を集めた一冊。
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小山田浩子「穴」

2013年下半期の芥川賞受賞作。

語り手の女性は、夫の転勤に合わせて非正規の仕事を辞め、夫婦で田舎町にある夫の実家の隣に引っ越した。姑はややお節介だが良い人で、生活上の不満は何も無い。ただ無職になった引け目が、淡々と続く日常に欠落感をもたらしている。
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