サピエンス全史(上)

ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 (上)」

我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか。というのはゴーギャンの有名な絵のタイトルだが、この問いかけは“人類”という自己認識が生まれてから、あらゆる学問や芸術、宗教の根本的なテーマとなってきた。

「サピエンス全史」は、この問いに近代が積み上げてきた学問の総力を挙げて挑む。生物学や社会学から、経済、科学、宗教、哲学まで、多角的にホモ・サピエンスの歴史を描き出す。出来事の羅列より、なぜ私たちは今こう考えるのか、なぜこうした社会が発展したのか、といった考察に力点が置かれていて非常に刺激的な内容。
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2016年まとめ

2016年に読んだ本は130冊(前年比9↑)、43653ページ(同7970↑)。

印象に残ったのは、ノンフィクションの新刊ではまずこの3冊。

  

長谷川康夫「つかこうへい正伝」
宮城公博「外道クライマー」
高野秀行「謎のアジア納豆」
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銀二貫

高田郁「銀二貫」

大坂を舞台にした時代小説の傑作。仇討ちで父を亡くした武家の少年が商家の丁稚となって――という成長物語を軸とした、いまや珍しいくらい素直な人情もの。銀二貫がそれぞれの人生を変えていく。登場人物の一人一人が魅力的で、主や番頭の商人としての矜持の描き方が気持ちいい。

道頓堀川

宮本輝「道頓堀川」

宮本輝の川三部作は高校生の頃に「泥の川」「螢川」を読んでいるが、この「道頓堀川」は初めて。喫茶店に住み込みで働く大学生、過去に傷を持つ店主、ビリヤードに打ち込むその息子らの人生が繊細な筆で綴られる。読みながら道頓堀の川辺を流れる人の波と川面に揺らめくネオンの明かりが目に浮かぶ、しみじみと良い作品。
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慟哭

貫井徳郎「慟哭」

娘を失い新興宗教にはまっていく男と、連続幼女誘拐殺人事件を追う警視庁捜査一課長の物語が交互に進む。大物政治家の隠し子で「ご落胤」「七光り」と揶揄され、自らの娘との関係も破綻している一課長の苦悩と、娘を亡くした男の狂気がやがて重なり合う。
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孤高の人

新田次郎「孤高の人」上・下

日本の単独登山の先駆け、加藤文太郎(1905-1936)。本人の遺稿集「単独行」は読んだことがあるが、彼をモデルとしたこの作品は初読。加藤は実名で描かれているが、新田次郎の創作色が強い。
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恐怖の哲学

戸田山和久「恐怖の哲学 ホラーで人間を読む」

恐怖とは何なのか、そして人はなぜ恐怖を楽しむ(ホラー映画、肝試し…etc)ことができるのか。著者は科学哲学の専門家。哲学や脳科学の先行論文を踏まえつつ、著者なりの視点を交えて分かりやすく人間の情動の謎に迫る。
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