中上健次「枯木灘」
再読。中上健次の他の作品はよく読み返してきたが、代表作とも言えるこの作品は高校のころ以来かも。当時、なぜ自分がこの作品に強く惹かれたのか、そして今読んでもなぜ心が揺さぶられるのか分からない。文章は、冗長で、くどい。ただ、そこに胸が詰まるほどの切実さがある。
この小説に物語は書かれていない。書かれているのは、登場人物の行動とさらに思考も含めて、全てが情景描写にすぎないと言える。ただ、その背後に、豊穣で、読み手を痛みとともにその中に引きずり込む物語が存在している。

読んだ本の記録。
サリンジャー「フラニーとズーイ」
村上春樹による新訳。
とにかく読んでいて胸が痛くなる。ズーイの言葉とフラニーのいらだちは、サリンジャー自身の叫びのようだ。信仰を巡る会話が延々と続き、当時はこれがそのままスピリチュアルな主題として受け止められたのだろうが、今読むと、それは訳者の村上春樹が指摘しているようにメタファーとして感じられる。かえって多くの人の心に迫るのでは。
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安部公房「幽霊はここにいる・どれい狩り」
安部公房の初期戯曲集。どれも安部公房のエッセンスが見事につまっていて、さらに、なぜ演劇に足を踏み入れたのかがはっきり分かる作品となっている。
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