日の名残り

カズオ・イシグロ「日の名残り」

1989年のブッカー賞受賞作。

語り手の執事スティーブンスは、四角四面の、現代ではかえって慇懃無礼に感じられるような“英国執事”。ことあるごとに執事としての品格を延々と語り、新たな主人であるアメリカ人に合わせるために、真剣にジョークを研究するさまがその性格をよく表している。

ある日休暇を貰った彼は、かつて同じ屋敷に勤めた元同僚の女性を訪ねて小旅行に出かける。その旅の風景と、過ぎ去った日々の回想が交互に綴られる。
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怪獣記

高野秀行「怪獣記」

トルコ東部のワン湖に棲むという謎の巨大生物ジャナワールの真偽を探る旅。

コンゴを舞台にした「幻獣ムベンベを追え」など、UMAを巡る旅を続けてきた著者だが、ジャナワールの存在には否定的で、これまで調査対象とは考えていなかったという。それが、なぜかトルコの研究者による詳細な研究書を日本の東洋文庫で見つけ、興味を持ち始める。その研究書にはジャナワールを目撃した人物の住所一覧までもが載っており、真実を確かめにトルコへ飛ぶ。
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何でも見てやろう

小田実「何でも見てやろう」

旅行記の古典。60~70年代、本書を読んで多くの若者が海を渡った。

著者は1959年にフルブライト留学生として米国に渡り、その帰途、欧州からアジアまで各地を訪れた。当時はまだ海外旅行が珍しかった時代。貧乏旅行で計22カ国を訪れた著者の記録は、同世代の若者から大きな衝撃と羨望を持って受け止められたことだろう。本書を読むと行き当たりばったりの奔放な旅のように思えるが、死後に見つかった著者のノートには、綿密な準備の跡と計画がびっしり書き込まれていたという。
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日本アルプス―登山と探検

ウォルター・ウェストン「日本アルプス―登山と探検」

W.ウェストンの名前は山歩きをする人間なら一度は聞いたことがあるだろう。明治時代の日本に滞在し、アルプスを中心に各地の山々を踏破した。日本の山の魅力を世界に知らせるとともに、修験道などの宗教登山ではない“趣味”としての登山を日本に浸透させた。

“Mountaineering and exploration in the Japanese Alps(日本アルプスの登山と探検)”はその代表作で、初めて槍ヶ岳や立山などを旅した時の情景が克明に記録されている。
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グアテマラの弟

片桐はいり「グアテマラの弟」

エッセイの名手とは聞いたことがあったが、これほど素敵な文章を書く人だとは。グアテマラで暮らしている弟を訪ねた旅の話に、幼い頃の家族の思い出などが挟まれる。少し手を入れるだけで、それぞれのエピソードがそのまま洒落た短編小説になりそうな趣がある。
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良寛 旅と人生 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>

松本市壽「良寛 旅と人生 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>」

非常によくまとまっていて入門にも最適の一冊。個人的には良寛というと漢詩のイメージが強かったが、改めてその作品と生涯に触れ、晩年の歌が強く心に残った。

「手ぬぐひで 年をかくすや 盆踊り」
「形見とて 何残すらむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみぢ葉」
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