福田善之「真田風雲録」
最近また増えている気がする真田十勇士ものの中でも金字塔の一つ。相手の心が読める猿飛佐助ほか、登場人物の設定が突拍子も無いけど魅力的。
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読んだ本の記録。
村田喜代子「龍秘御天歌」
慶長の役で朝鮮から日本に渡った陶工一族の物語。
日本で苗字帯刀を許されるほど重用され、偉大な職人としての地位を築いた長の死に、村を挙げての盛大な葬儀の準備が進む。その日本式の弔いに対し、百婆と呼ばれる妻はクニの弔いにこだわる。これからも日本で生きていかないといけない長の弟と息子たちは、百婆と住職や町役との間で複雑な立場に追い込まれる。
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渡辺保「日本の舞踊」
舞踊という最も言葉で表現しにくい芸能をいかに語るか。
著者は「身体の声」という言葉を使う。これだけでは色々な文脈で使われる表現のため、多様に理解できてしまうが、その声とは何かを、井上八千代や友枝喜久夫ら名人の芸を比較して丁寧に説明する。
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有吉佐和子「紀ノ川」
明治から大正、昭和へ、社会が大きく変わっていった時代を描いた女三代記。
家父長的な旧家の盛衰を題材としながら、そこを貫くのは男の系図ではなく、母への反発と共感を繰り返しながら女から女へと受け継がれる血筋。
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河竹登志夫「舞台の奥の日本 ―日本人の美意識」
舞台芸術を通じた日本文化論。
日本の舞台は「再現」では無く「示現」の芸術であり、劇的葛藤より、葛藤後の道行などを最大の見せ場とすることに象徴されるように、情感こそ全てに優先される。見得など絵面が重視され、殺人のシーンさえ、それでひとつの見せ物として完成させてしまう唯美的な芸能とも言える。
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有吉佐和子「ふるあめりかに袖はぬらさじ」
露をだに厭う倭の女郎花、ふるあめりかに袖はぬらさじ
自ら命を絶った遊女、亀遊は攘夷の嵐の中、偽りの辞世の句まで添えられ、攘夷女郎としてまつりあげられる。親しかった芸者、お園は時代の空気に流され、虚構を語り継ぐ。
伝説は求める者がいて生まれる。まさに現代社会にも通じる作品。
実際に玉三郎のお園で上演されているが、読んでいて歌舞伎の舞台が目に浮かぶような台詞の数々が素晴らしい。
併録の「華岡青洲の妻」も小説の戯曲化で、献身的な妻と母、その対立に気付きながら利用していた青洲、誰一人として本心を喋らない。シンプルな台詞のやりとりに息が詰まるような緊張感が漂う。
ラフカディオ・ハーン「新編 日本の面影」
ハーンの代表作の一つ、「知られぬ日本の面影」の新編集版。ただの紀行文にとどまらない記述の密度に驚かされる。かなり丁寧に話を聞き、寺社仏閣の由来から民間伝承まで細かく書き込んでいる。情景描写は小説のよう。
「神々の国の首都」「杵築」「日本の庭にて」などでハーンの書く日本はこの上なく美しい。
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「ボブ・ディラン自伝」
自伝といっても、ぱっと読んだだけではいつのことか分からない部分も多く、決して親切とは言えない内容がこの人らしい。
代弁者と言われることへのいらだち、隠遁生活から「新しい夜明け」への第3章、ダニエル・ラノワとの「オー・マシー」を振り返った第4章などが具体的に語られている一方で、エレクトリックへの転向など、外から見た転機についてはほとんど触れていない。
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