八つ墓村

横溝正史「八つ墓村」

もはや古典だが、松本清張より古さを感じさせない。 田舎の閉鎖的な雰囲気と、物語そのものに引き込まれる。漫画でも、ドラマや映画でも、この作品のオマージュというべきものがたくさんあるが、原点にして完璧。

妻と最期の十日間

桃井和馬「妻と最期の十日間」

人を喪うということに向き合う看取りの日々。 宗教的な部分で、著者の考え方に違和感を感じる部分もあるが、些細なこと。真に迫った記録。

新釈 走れメロス 他四篇

森見登美彦「新釈 走れメロス 他四篇」

上手いな~。読んで面白いだけでなく、感心してしまう出来。

この人の文体は、古典小説の真似と、大学生のくだらないノリが上手く混ざり合っている。巧みな名作のパロディに終始にやにや。

スリー・カップス・オブ・ティー

グレッグ・モーテンソン「スリー・カップス・オブ・ティー」

K2登山に失敗したアメリカ人の青年グレッグが、助けてくれたパキスタンの人々のため、山奥の村々に学校を建てる活動を始める。だまされたり、追放のファトワを受けるなど何度も窮地に陥りながらも、奇跡のような出会いを重ね、活動は広がっていく。
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1Q84 BOOK3

村上春樹「1Q84 BOOK 3」

おそらく、この物語はこれで完結したのだろう。BOOK3で意外なほど、おとなしく着地してしまった。BOOK1、2を読み終えた時は未完成だと感じたが、通読すると、2で一応すべての要素は出尽くし、完結していたような気もする。
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沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

佐野眞一「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」

「月刊PLAYBOY」の連載をまとめた約650ページの大作。沖縄やくざの系譜や琉球独立論、知事選の泡沫候補など、忘れられた沖縄の現代史を訪ね歩く。

沖縄を“被害者”として神聖化するのではなく、戦果アギヤーや軍用地主の存在、奄美出身者への苛烈な差別なども取り上げている。
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告白

町田康「告白」

あまりに思弁的で、百姓としても侠客としても生きられず、身を滅ぼしていく主人公・熊太郎。

「河内十人斬り」の実話を基にした一風変わった時代小説。「告白」のタイトルどおり、主人公の内面描写が800ページ延々と続くが、河内弁の饒舌な語り口で冗長さは感じさせない。

戦争における「人殺し」の心理学

デーヴ・グロスマン「戦争における『人殺し』の心理学」

原題はThe Psychological Cost of Learning to Kill in War and Society。軍属である著者の問いは「なぜ人は人を殺さないのか」。

第2次世界大戦で、兵士の発砲率は20%以下だったという。目前に死の危険が迫っても、人は人を殺す事を戸惑う。しかし軍隊の心理学は「条件付け」や「脱感作」、距離的な条件を変えることで、人を殺す事に慣れさせた。朝鮮戦争を経てベトナム戦争では発砲率は90%まで上昇したという。一方、人殺しが心にどれ程の負荷をかけるのか。

単純な反戦や戦争賛美を超えた戦争論。

日本残酷物語1 貧しき人々のむれ

宮本常一、山本周五郎、揖西高速、山代巴「日本残酷物語1 貧しき人々のむれ」

「残酷物語」という言葉から特異なケースを取り上げた記録集と勘違いさせかねないが、内容はまっとうな民衆史。

飢えや病が避けられぬものだった時代。人が生きていくため、どんな歴史を刻まなければならなかったのか。
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アフリカを食べる

松本仁一「アフリカを食べる」

「カラシニコフ」の著者の特派員時代をつづったエッセイ。山羊の骨髄、牛の生き血、インパラの刺し身……、軽い文章でアフリカの食文化が描かれているが、同時に紛争や貧困の現実も痛い程伝わる。

食をテーマとしたルポは辺見庸の「もの食う人々」が有名だが、辺見の文章はやや大仰で、時折傲慢さも感じられる。著者の年齢も連載・刊行時期もほぼ同じだが、辺見より視線が現地に近い。軽妙だが、敬意に満ちている。