小野一光「家族喰い ―尼崎連続変死事件の真相」
疑似家族を精神的に支配し、血縁同士で暴力を振るわせ、親族の財産まで搾り取る。逃げ出しても追いかけ、気に入らなければ殺してしまう。
何より恐ろしいのは、普通の環境の、普通の感覚を持った人たちがちょっとした因縁で巻き込まれ、まともな生活も大人としての矜持も失ってしまうということ。
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読んだ本の記録。
小野一光「家族喰い ―尼崎連続変死事件の真相」
疑似家族を精神的に支配し、血縁同士で暴力を振るわせ、親族の財産まで搾り取る。逃げ出しても追いかけ、気に入らなければ殺してしまう。
何より恐ろしいのは、普通の環境の、普通の感覚を持った人たちがちょっとした因縁で巻き込まれ、まともな生活も大人としての矜持も失ってしまうということ。
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奥野修司「ナツコ 沖縄密貿易の女王」
終戦直後の沖縄に現れた数年間の大密貿易時代に、太陽のように存在した夏子。
八重山は戦前、戦中を通じて台湾経済圏に属し、終戦後は米軍支配下で放置されたことで、「黄金の海」に浮かんだ密貿易の中心となった。日本の辺境となった現在からは想像できないほどの繁栄の時代。アメリカ世でもヤマト世でもない、ウチナー世を象徴しながら、資料に残らなかった38年の生涯。
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鈴木紀夫「大放浪 ―小野田少尉発見の旅」
フィリピン・ルバング島から小野田少尉を帰国させた青年、鈴木紀夫。60年代末、学生運動に馴染めず海外に出た、と言えば聞こえがいいが、実際は幼さに任せた大放浪。行く先々で奔放に振る舞い、人の世話になり、時に迷惑をかけつつ、自分は特別なことをしているという感覚は抜け切らない。藤原新也や沢木耕太郎に近い世代だが、「印度放浪」や「深夜特急」に比べ、ずいぶんと自分に正直で痛快な旅行記。
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角幡唯介「雪男は向こうからやって来た」
雪男捜索のルポというよりも、雪男が実在すると確信し、生涯をそれに費やした男たちの物語。著者は08年の雪男捜索隊に参加しているが、その時の記録より、それ以前に雪男の姿や足跡を目撃したことがきっかけで、死ぬまでヒマラヤに通い続けることになった人々の話が印象深い。
人がふとしたきっかけで信仰の道に入るように、雪男は向こうからやって来て、彼らを離さなかった。「空白の五マイル」は冒険そのものの凄みで読ませたが、UMAのような読む前に結果が分かっている題材をここまで読ませるのは相当な筆力。大きさや外見はともかくとして、ヒマラヤに2足歩行する未知の動物=雪男はいるのかもしれないと思わされた。
野村進「島国チャイニーズ」
劇団四季からチャイナタウン、山形の農村の中国人妻まで、在日華僑、華人の話を聞いて歩く。
つい、「在日」として韓国・朝鮮系と(しばしばマイナスイメージで)ひとくくりに考えがちだが、日本での生活への満足度や、国籍、中国名へのこだわりの薄さなど実態は大きく異なる。雑誌連載がもとになっているためか、それぞれの話が少し浅いけど、在日チャイニーズの多様さに気付かされる。
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守誠「ユダヤ人とダイヤモンド」
宝石の代表的存在とも言えるダイヤモンドだが、その価値は希少性に由来するのでは無い。デビアスによる採掘の独占、徹底した販売統制を経て、二流の石の価値が作られていった。
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ロメオ・ダレール「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか ―PKO司令官の手記」
原題は「Shake Hands with the Devil」。この本をもとにした同名ドキュメンタリーを見たことがあるが、まさか邦訳されるとは。
94年、国民の1割に当たる約80万人がたった100日の間に虐殺されたルワンダ。悲劇の記録は邦訳も含めて多く出ているが、背景を丁寧に分析した本は少ない。これは、当時、目の前で始まった虐殺を傍観するしかなかった国連平和維持軍の司令官による手記。徐々に緊張感が高まる中、国連と国際社会がいかにルワンダを無視したのかの貴重な証言となっている。
「私たちは同じ人間なのだろうか? あるいは人間としての価値には違いがあるのだろうか?」
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菅原出「民間軍事会社の内幕」
兵站だけではなく、訓練、軍事作戦まで担うPrivate Military Company。国家が表立って行えない分野や、民間の方が効率よく専門性を高められる分野から始まったが、現在はコストカットや人員不足を補うため、かつての軍隊の一部を担う形で欠かせない存在となっている。
正規兵の訓練や、捕虜の尋問まで“外注”する実態は日本からは想像しがたいが、PR会社がメディアや政治家を誘導して世論を形成し、PMCが大量動員されて戦争を遂行する新たな軍需産業の仕組みがイラク戦争を経て出来上がりつつある。
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高山文彦「火花 北条民雄の生涯」
「何もかも奪われてしまって、ただ一つ、生命だけが取り残された」と「いのちの初夜」で書いた北條民雄。
「社会的人間として亡びるだけではありません。そんな浅はかな亡び方では決してないのです」
癩を病み、23歳の若さで夭逝するまで生きることの恐ろしさを極限化した生を見つめ続けた。その作品は究極の所で、生を肯定する叫びとなった。
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