高橋源一郎「恋する原発」
予想以上に不謹慎、想像以上にカオス。震災チャリティーAVを巡り、原発、宗教、天皇、北朝鮮に始まり、ディズニー、AKB、けいおん……、今ぱっと思いつく限りの「批判できない空気」があるテーマをエログロ交えて書き荒らす。
十年後、二十年後まで残っているような名作とは思わないけど、面白い。こういう作品が出せるのが文学や小説の懐の深さだろう。
読んだ本の記録。
石井光太「遺体―震災、津波の果てに」
医師、消防団、民生委員、市職員…、釜石の安置所で遺体と関わった人々を追ったドキュメント。
「死者・行方不明者2万人」がどれほどのことなのか。
“遺体 ―震災、津波の果てに” の続きを読む
広河隆一「福島 原発と人びと」
原発事故で福島は何もかもが変わってしまった。その現実が新書なりによくまとまっていると思うが、福島に住んでいる人間としては、どれもが当たり前のように目にし、耳にしてきたことだから、新しい驚きも怒りも無い。
“福島 原発と人びと” の続きを読む
ローレンス・ライト「倒壊する巨塔 ―アルカイダと『9・11』への道」
アルカイダのトップ、ビンラディンとザワヒリの人生を幼年時代から追いながら、同時多発テロに至る過程を描く。
イスラム原理主義の誕生から、土建屋の空虚な熱情が先鋭化し、ジハードとしてアメリカに標的を絞るまで。人物に焦点を当てることでハンチントンの「文明の衝突」のような粗雑な理解とは対照的な9・11への道を浮き彫りにしている。
“倒壊する巨塔 ―アルカイダと「9・11」への道” の続きを読む
石橋毅史「『本屋』は死なない」
全国のユニークな書店員の話を聞いて回ったドキュメント。著者は専門紙出身だけあって、出版流通業界の現状や課題に触れつつ、電子書籍に無限の可能性を見たり、紙に文化の本質を置いたりということはない。
本屋が出版文化の興隆に果たした役割がよく分かるし、棚作りの工夫など、本屋好きにとっては読み物としても大変面白い。
“「本屋」は死なない” の続きを読む
菊地成孔、大谷能生「M/D ―マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究」
圧倒的な分量。講義録だけど、明らかに加筆しまくったと分かる、くどく(ほめ言葉)、濃密な文章。
アンビヴァレンス、ミスティフィカシオン、戯画的なポップさ、革命家ではなくモードチェンジャー、スターへの憧れ、飽きっぽさ。
“M/D ―マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究” の続きを読む
ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」
うーん、面白い。
トルヒーヨ独裁政権下のドミニカから渡米した家族の物語。デブでさえないオタク青年の悲劇的な一生と、その背後に流れるドミニカの辛く厳しい現代史。
“オスカー・ワオの短く凄まじい人生” の続きを読む