遭難に至る過程と、いかに生き延びたかのドキュメント。とても参考になる内容で、もっと早く読めば良かった。ノンフィクションの読み物としても非常に面白い。
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ヤマハ WXA-50
15年あまり使ってきた山水のアンプ(SANSUI AU-303R)を買い替え。
ほぼストリーミングで音楽を聴くようになったため、レシーバーやDACを兼ねたヤマハの小型機種WXA-50に。
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紀伊物語
「大島」「聖餐」の2部構成。物語としては一続きだが、発表時期は5年ほど離れており、作品の手触りも大きく異なる。中上の長編の中では、“路地”の最後という決定的な場面を描きながら、あまり読まれることも語られることも少ない作品。
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海も暮れきる
「こんなよい月を一人で見て寝る」
「咳をしても一人」
東京帝大を卒業し、大手保険会社のエリートコースを歩みながら、酒におぼれ、仕事を捨て、家族に捨てられ、小豆島の小さな庵で最期を迎えた尾崎放哉。
種田山頭火と並ぶ自由律俳句の大家でありながら、人間的には極めて厄介な人物であったことが知られている。吉村昭によるこの評伝小説では、その不安定な性格が細かく描写されている。タイトルは「障子あけて置く海も暮れきる」から。
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洞窟オジさん
著者の加村一馬氏は1946年、群馬県生まれ。13歳の時に、両親の虐待から逃れて足尾銅山の廃坑に住み着き、その後も富士の樹海や川辺を転々として、ホームレスとして半世紀近くを生きてきた。
ヘビやネズミ、カタツムリ、カエルを食べ、時には山で採った山菜を売ってわずかな収入を得る。やがて茨城の小貝川の河川敷に小屋を建てて暮らすようになり、57歳の時に窃盗未遂で逮捕され、取り調べと公判を通じて半生が明らかになった。
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ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー
著者の初期の代表作で、直木賞受賞作。ソウル・ミュージックをBGMに、黒人社会の恋愛を描く。小洒落た雑誌に載っていそうな翻訳小説の雰囲気だが、性を描写しつつ透明感のある洒脱な文章に著者の作家性が強く表れている。
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廃市
ひと夏、親戚の紹介で旧家の世話になることになった語り手の青年。そこで美しい姉妹と、姉の夫を巡る複雑な人間関係に触れることになる。水路が縦横に巡らされた、美しく、どこか退廃的な雰囲気が漂う田舎町を舞台とした名品。ノスタルジックな雰囲気が好きな人にはたまらないだろう。
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戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇
堀川惠子「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と『桜隊』の悲劇」
広島で被爆し、全滅した劇団「桜隊」は、井上ひさしの「紙屋町さくらホテル」や新藤兼人監督の映画で取り上げられてきたが、いずれも原爆の悲劇としての側面が強く、なぜ彼らが広島にいたのか、その背景にある戦前・戦中の苛烈な思想統制、演劇人への弾圧については資料の不足からあまり描かれてこなかった。
著者は、桜隊の演出を手がけていた八田元夫の膨大なメモや未発表原稿を発掘し、彼の生涯を縦軸に、戦前から戦後に至る表現者たちの受難の歴史を現代によみがえらせた。
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小説「聖書」
神学者でもあり、作家でもある著者が、聖書の膨大なテキストを小説の文体で書き下ろした。
天地創造、神とアブラハムの契約、モーセの出エジプト、ダビデとソロモンの時代、バビロン捕囚。旧約聖書に書かれたエピソードの一つ一つは多くの人が知っているだろうが、全体を通読したことがある人はキリスト教徒やユダヤ教徒以外では稀だろう。膨大な断片の集まりである聖書を、神学者としての緻密な解釈に立脚しつつ、原典に忠実に、現代の読み物として蘇らせた著者の仕事はまさに偉業と言える。
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