小篠綾子「糸とはさみと大阪と」
コシノ家のお母ちゃんの自伝。戦前戦後を生き抜き、一時代を築いた女系家族の年代記として、服飾史に興味が無くても面白い。文章は淡々とした丁寧語だが、所々に熱い思いとデザイナーとしての自信、温かな人柄が滲む。
読んだ本の記録。
石井光太「遺体―震災、津波の果てに」
医師、消防団、民生委員、市職員…、釜石の安置所で遺体と関わった人々を追ったドキュメント。
「死者・行方不明者2万人」がどれほどのことなのか。
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広河隆一「福島 原発と人びと」
原発事故で福島は何もかもが変わってしまった。その現実が新書なりによくまとまっていると思うが、福島に住んでいる人間としては、どれもが当たり前のように目にし、耳にしてきたことだから、新しい驚きも怒りも無い。
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ローレンス・ライト「倒壊する巨塔 ―アルカイダと『9・11』への道」
アルカイダのトップ、ビンラディンとザワヒリの人生を幼年時代から追いながら、同時多発テロに至る過程を描く。
イスラム原理主義の誕生から、土建屋の空虚な熱情が先鋭化し、ジハードとしてアメリカに標的を絞るまで。人物に焦点を当てることでハンチントンの「文明の衝突」のような粗雑な理解とは対照的な9・11への道を浮き彫りにしている。
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石橋毅史「『本屋』は死なない」
全国のユニークな書店員の話を聞いて回ったドキュメント。著者は専門紙出身だけあって、出版流通業界の現状や課題に触れつつ、電子書籍に無限の可能性を見たり、紙に文化の本質を置いたりということはない。
本屋が出版文化の興隆に果たした役割がよく分かるし、棚作りの工夫など、本屋好きにとっては読み物としても大変面白い。
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内澤旬子「世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR」
アラブから芝浦まで、イラスト付き屠場紀行。
差別や動物愛護など、語ろうと思えばいくらでも語れる題材だけど、過剰な意味付けをせず、シンプルに「大切な、面白い仕事」としていきいきと描いている。
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