サピエンス全史(上)

ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 (上)」

我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか。というのはゴーギャンの有名な絵のタイトルだが、この問いかけは“人類”という自己認識が生まれてから、あらゆる学問や芸術、宗教の根本的なテーマとなってきた。

「サピエンス全史」は、この問いに近代が積み上げてきた学問の総力を挙げて挑む。生物学や社会学から、経済、科学、宗教、哲学まで、多角的にホモ・サピエンスの歴史を描き出す。出来事の羅列より、なぜ私たちは今こう考えるのか、なぜこうした社会が発展したのか、といった考察に力点が置かれていて非常に刺激的な内容。
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世界のおばあちゃん料理

ガブリエーレ・ガリンベルティ「世界のおばあちゃん料理」

本屋で思わず買ってしまった一冊。邦題はストレートなレシピ本という感じだけど、原題は“In Her Kitchen”。著者はイタリアの写真家で、その名の通り、世界のおばあちゃんのキッチンの写真に、得意料理のレシピと短いライフストーリーを付したもの。欧米からアジア、アフリカ、太平洋の島国まで50カ国58人。家庭料理だけあって、ほとんどは塩やオリーブオイルなどシンプルな味付けで日本でも簡単に再現可能なのがうれしい(一部、ムースやイグアナ、乾燥芋虫など、手に入らない食材も混ざっているけど)。それぞれの料理におばあちゃんの生き方や家族との関係が滲み、土地の暮らしが垣間見えて引き込まれる。

真剣師 小池重明

団鬼六「真剣師 小池重明」

「新宿の殺し屋」と呼ばれた真剣師(賭け将棋師)、小池重明の評伝。後のタイトル保持者も含めプロを次々と破るほどの腕を持ちながら、酒や金絡みのトラブルが絶えず、3度も人妻と駆け落ちするなど浮き沈みの多い44年の人生を送った。
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謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

高野秀行「謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉」

納豆というと日本独自の食べ物かと思ってしまうが、東南アジアの山岳部などにも日本とほぼ同じ納豆が存在するという。著者はかつてミャンマー北部、カチンの密林で出会った納豆を思い出し、納豆探求の旅に出る。
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14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還

澤地久枝「14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還」

ノンフィクションの大家による自身の戦争体験記。満州に暮らした女学校時代の回想から、引き揚げまで。思春期の記憶を頼りに書いていて、同様の体験記に比べて決して濃い内容ではないが、等身大の記憶として受け止められる。
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桂春団治

富士正晴「桂春団治」

戦前の落語界で一世を風靡した桂春団治の評伝。上方落語を巡る状況は今に至るまで時代とともに目まぐるしく変わっており、戦前と刊行(1967年)当時のそれぞれの空気が感じられて興味深い。
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宮本常一と土佐源氏の真実

井出幸男「宮本常一と土佐源氏の真実」

宮本常一が記した文章で最も有名な「土佐源氏」。老博労の聞き書きで、前近代の庶民の性に関する民俗学資料として評価されてきたが、そこに創作、脚色が混ざっていることも以前から指摘されてきた。著者は、宮本常一の若き日の恋愛遍歴にまで踏み込んで、土佐源氏に投影された宮本自身の体験を探っていく。
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