マルク・レビンソン「コンテナ物語―世界を変えたのは『箱』の発明だった」
地味なタイトルだが、ノンフィクションの名著として名高い一冊。
「コンテナ」が本格的に登場したのは二十世紀中盤。コンテナは物流コストを劇的に下げ、世界の経済を大きく変えた。箱での輸送は19世紀以前から試みられていたが、陸海共通のコンテナという仕組みはトラック運送で身を興した一人の男の発想だった。そのマルコム・マクリーンの生涯を軸に、社会と経済の変化を追っていく。
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読んだ本の記録。
マルク・レビンソン「コンテナ物語―世界を変えたのは『箱』の発明だった」
地味なタイトルだが、ノンフィクションの名著として名高い一冊。
「コンテナ」が本格的に登場したのは二十世紀中盤。コンテナは物流コストを劇的に下げ、世界の経済を大きく変えた。箱での輸送は19世紀以前から試みられていたが、陸海共通のコンテナという仕組みはトラック運送で身を興した一人の男の発想だった。そのマルコム・マクリーンの生涯を軸に、社会と経済の変化を追っていく。
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田中康弘「日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?」
マタギの取材を長年続けてきた著者が、西表島の猪から礼文島のトドまで、各地の猟に同行したルポ。日本人は決して農耕一色の民族ではない。むしろ何でも食べる。猟の方法も興味深いが、何より、その後の解体、調理の生き生きとした描写に引き込まれた。
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宮城公博「外道クライマー」
エンタメ系ノンフィクションでは、早くも今年ベストと呼び声高い一冊。2012年、那智の滝に登り逮捕されたクライマーが綴る“山ヤ”よりも無茶苦茶な“沢ヤ”の世界。籔をかき分け、あえて谷底に入り、死と隣り合わせでゴルジュを正面突破する。沢ヤに比べれば、アルパインクライマーのなんと常識的なことか。馬鹿馬鹿しさを突き抜けて、次第に神々しく見えてくる。
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長谷川康夫「つかこうへい正伝 1968-1982」
間近で青春時代を過ごした著者だからこそ書ける詳細な評伝で、同時に、つかこうへいという特異なキャラクターに関する幻想を剝ぐ破壊力のある内容にもなっている。つかが台本を書かずに役者との共同作業で台詞を作る「口立て」の手法をとったことはよく知られているが、その様子が生き生きと描かれていて、「熱海殺人事件」や「蒲田行進曲」などの制作過程も分かる貴重な一冊。
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カーラ・パワー「コーランには本当は何が書かれていたか?」
これまで訪れた土地の中でも、パキスタンやシリアといった保守的なイスラム地域こそが最も人が親切で、さらにこちらの思想や信仰にも寛容だったのはなぜかという疑問に答える一冊だった。
邦訳書にありがちな大胆なタイトルが付けられているが、原題は”If the oceans were ink”。コーランの解説書ではない。米国人ジャーナリストが、保守的なイスラム学者であるアクラム・ナドウィー師のもとに通い、コーランを学ぶ。その過程で出会った文化の相違や、さまざまな疑問を丁寧に綴っており、著者と読者が同じ道を歩くことができる優れたルポとなっている。
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岩下尚史「名妓の夜咄」
新橋芸者の聞き書き。
花柳界は小説から映画、音楽までさまざまなジャンルの舞台となってきたが、イメージ先行の創作が多く、その実態を丁寧に記録したものはほとんど無い。戦前から戦後にかけての花街の様子が伝わる貴重な一冊。
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星野博美「みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記」
戦国~明治にかけ、日本は4万人とされるキリシタンの殉教者を出した。棄教すれば命は許された一方で、棄教を拒めば火あぶりや熱湯責めなどの過酷な拷問が行われた。なぜ信徒たちは信仰を貫き、神父らも国外追放を拒んで命を投げ出したのか。著者はその疑問を抱いてキリシタンの足跡をたどる旅に出る。
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フランク・ディケーター「毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962」
文化大革命の前史であり、人類史に残る政治的失敗である「大躍進」の全体像について、綿密な資料収集をもと描いた労作。何より、中国共産党の恥部についてここまでまとめられたことに驚く。中央の档案館(公文書館)にはアクセスできないため、地方の档案館の資料を用い、当時の悲惨な状況を詳らかにしている。
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伊藤正一「定本 黒部の山賊 アルプスの怪」
戦後間もない頃に北アルプス最奥の地に山小屋を買い、そこに住み着いていた「山賊」とともに雲ノ平を拓き、登山者を見守ってきた伊藤正一氏。狩りの話から、ヘリコプターの無い時代の小屋建設の苦労、遭難者の救助。さらに、佐々成政の埋蔵金伝説をめぐる悲喜こもごもや、カッパや化け狸の話まで。
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