アメリカひじき・火垂るの墓

野坂昭如「アメリカひじき・火垂るの墓」

 

「夜更けに火が燃えつき、骨を拾うにもくらがりで見当つかず、そのまま穴のかたわらに横たわり、周囲はおびただしい蛍のむれ、だがもう清太は手にとることもせず、これやったら節子さびしないやろ、蛍がついてるもんなあ、上ったり下ったりついと横へ走ったり、もうじき蛍もおらんようになるけど、蛍と一緒に天国へいき。」

自伝的小説「ひとでなし」によると、著者は「火垂るの墓」を〆切に追われながら書き上げて以来、一度も読み返していないという。アニメ映画も本編は一度も見ておらず、宣伝用の抜粋で涙を流し、戦後唯一泣いたのがその時だったと記している。
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あとは野となれ大和撫子

宮内悠介「あとは野となれ大和撫子」

直木賞と芥川賞の候補にそれぞれ選ばれ、硬軟幅広い作風を持つ作家の直木賞候補作の一つ。

設定が秀逸。舞台は中央アジア、干上がったアラル海に建国された架空の国アラルスタン。しがらみのない新たな国は、ソ連崩壊や民族紛争の混乱を逃れて周辺国からの難民が集まり、中央アジアにおける「自由主義の島」と呼ばれている。
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渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

大島真寿美「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」

浄瑠璃作者、近松半二の生涯を書く時代小説。近松門左衛門の縁者か弟子のように思われがちな名前だが、直接の関係はなく、半二が門左衛門に私淑して近松姓を名乗った。

近松半二こと穂積成章は、儒学者で浄瑠璃好きの父のもとで育ち、道頓堀の竹本座に通ううちに浄瑠璃を書くようになる。同時代の歌舞伎作者、並木正三と半二を幼馴染みの関係としたフィクションの設定が物語を魅力的なものにしている。
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アムリタ

吉本ばなな「アムリタ」

 

男好きする母、年の離れた繊細な弟、下宿しているいとこ、訳あって身を寄せている母の幼なじみ、頭を打って記憶が不確かな私。少し変わった五人家族。

妹は若くして死を選び、私はその恋人と付き合い始める。どこまでも続いていきそうな穏やかな日常に、当たり前の日常から少しずれてしまった人々が登場する。
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夜のピクニック

恩田陸「夜のピクニック」

「歩行祭」と呼ばれる高校行事で夜通し歩く生徒たちの姿を描いた青春小説。第2回(2005年)本屋大賞受賞作。

異母きょうだいでクラスメートでもある融と貴子の関係を軸に、高校生の男女が友人や恋人、家族との関係で悩みながら生きている姿が、刻一刻と変化していく夜を背景に描かれる。
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