カブールの園

宮内悠介「カブールの園」

芥川賞候補になった表題作は、幼い頃に受けたいじめや差別の記憶と、過干渉な母との関係に悩む日系女性が主人公。タイトルからアフガニスタンの話かと思ったら、「カブールの園」とは女性が受けているセラピーのことを指す言葉で、作品の舞台は米国西海岸。現実のカブールは作中に登場しない。
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西南役伝説

石牟礼道子「西南役伝説」

西南戦争を体験した古老の話の聞き書き。「苦海浄土」と並ぶ著者の代表作とされながら、絶版で全集以外では手に入りにくかった作品だが、追悼か、大河ドラマ効果か、講談社文芸文庫から再刊された。ノンフィクションというよりは、巫女に喩えられることもある偉大な作家が語り直した文学作品といった方がふさわしい。
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屈辱ポンチ

町田康「屈辱ポンチ」

十数年ぶりに再読。著者の作品は高校生の時に「夫婦茶碗」を読んで爆笑して以来、新刊が出ると手に取ってきた。それまで活字、ましてや小説で声を上げて笑ったことなんてなかったので、小説の面白さを教えてくれた作家の一人でもある。年を重ね、笑いに対して鈍感になった(涙腺は緩くなったのに)せいか、もはや吹き出すことは無かったけど、今読んでもやっぱり面白い。
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