著者の作品を一言で評するなら、なんてことないのになんだか面白い。登場人物は皆どこかずれているけど、そのずれは他人事とは思えないし、力の抜けた筆に不思議と引き込まれる。
“俳優・亀岡拓次” の続きを読む
カブールの園
芥川賞候補になった表題作は、幼い頃に受けたいじめや差別の記憶と、過干渉な母との関係に悩む日系女性が主人公。タイトルからアフガニスタンの話かと思ったら、「カブールの園」とは女性が受けているセラピーのことを指す言葉で、作品の舞台は米国西海岸。現実のカブールは作中に登場しない。
“カブールの園” の続きを読む
西南役伝説
西南戦争を体験した古老の話の聞き書き。「苦海浄土」と並ぶ著者の代表作とされながら、絶版で全集以外では手に入りにくかった作品だが、追悼か、大河ドラマ効果か、講談社文芸文庫から再刊された。ノンフィクションというよりは、巫女に喩えられることもある偉大な作家が語り直した文学作品といった方がふさわしい。
“西南役伝説” の続きを読む
屈辱ポンチ
十数年ぶりに再読。著者の作品は高校生の時に「夫婦茶碗」を読んで爆笑して以来、新刊が出ると手に取ってきた。それまで活字、ましてや小説で声を上げて笑ったことなんてなかったので、小説の面白さを教えてくれた作家の一人でもある。年を重ね、笑いに対して鈍感になった(涙腺は緩くなったのに)せいか、もはや吹き出すことは無かったけど、今読んでもやっぱり面白い。
“屈辱ポンチ” の続きを読む
再婚
昭和の犬
もうひとつのワンダー
「ワンダー Wonder」で描かれなかった三つの物語。後日譚ではなく、前作でいじめっ子として描かれたジュリアンと、幼なじみのクリストファー、優等生のシャーロットの3人の視点で、それぞれの学校生活が綴られる。
“もうひとつのワンダー” の続きを読む
海の見える理髪店
4TEEN
異類婚姻譚
2015年下半期の芥川賞受賞作。
「異類婚姻譚」と言えば古くからある説話の一類型だが、ここで描かれるのは現代の夫婦関係。会社員の夫と暮らす専業主婦の視点で、現代の説話は綴られる。
“異類婚姻譚” の続きを読む