空の中

有川浩「空の中」

著者の作品を評して時々使われる“大人向けライトノベル”とは言い得て妙。文章や構成は丁寧だけど、キャラ作りとかセリフとかがラノベっぽい。読みながらにやにやしてしまう。ストーリーも驚きは無いけど、良いよねこういうの、って読後感。老若男女、お話が好きな全ての人にお勧めできる。

苦海浄土

石牟礼道子「苦海浄土」

読み終え、言葉が出ない。水俣の話だが、ルポでも聞書きでもない。ジャーナリズムでは絶対に出来ない記録と鎮魂と告発の仕方。

苦海そのものに生きる人々の語りは、逆説的に人間讃歌ですらある。

岬・化粧他 ―中上健次選集12

「岬・化粧他 ―中上健次選集12」

「重力の都」は息苦しさを感じるほど。

谷崎の後に中上があるが、その後は無い。中上の死で日本の近代文学が終わったと言われるが、それに納得してしまうだけの作品。

スティル・ライフ

池澤夏樹「スティル・ライフ」

初期の池澤夏樹の文章は透明感という言葉がしっくりくる。文章を読むだけで気持ちが軽くなる作家はそうそういない。

中上健次「岬」

地虫が鳴き始めていた、の書き出しから続く息苦しいほどの濃密さ。

“路地”では噂こそが現実で、場所の狭さは物語の狭さを限定しない。「枯木灘」に続き、「千年の愉楽」や「奇蹟」へと広がる作品群の無限の可能性を予感させる。

文鳥・夢十夜

夏目漱石「文鳥・夢十夜」

久しぶりに読んだけど表題の二作は鳥肌もの。夢十夜の第一夜、第三夜は何度読んでもぞくぞくする。「永日小品」も素敵な小品集。

葉桜の季節に君を想うということ

歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」

中途半端にきざな文章が鼻について前半は読み進めるのが苦痛だったが、それも含めて大がかりな叙述トリックは見事としか言いようがない。全体的に仕掛けのために物語を組み立てたような不自然さは否めないが、叙述トリックの大傑作。